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嘘つきトライアングル

俺はいつも、女性に邪険に扱われていた。 目が合えば、キモい見られてたとひそひそ言われ。 帰り道が同じなだけでストーカーだと言われ。 告白すると一年笑い者にされた。 年下の教育実習生に気のある素振りを取られ、浮かれていたら、それすらも別の男を手に入れるために利用されただけのものだった。 だから、こんな風に。 想いを、ありがとうだなんて言われたことは一度もなかった。 また、涙がぼろっとこぼれる。 「……せん、せいが……オレ、を大切に、しよ……として、くれてたの、わかってた、よ……」 アンジェリーはひゅーひゅーと相変わらず苦しそうにしながら、途切れ途切れの言葉を続ける。 「……ひど、いこと……させ、て、ごめんね……」 違う。何でお前が謝るんだよ。 胸がズキズキと痛んだ。 「……オレ、人から、愛され、る、こと……疎くて……だから、嬉し……っか……た、よ……ありがとう………」 アンジェリーの細い指が俺の頬に触れ、涙をぬぐってくれる。 知ってる。 お前が、親から自ら命をたつことを選ぼうとしたほど、杜撰な扱いを受けてきたことを。 知ってるのに、俺は。 「………っごめん……アンジェリー、ごめん!!」 縋るように細い体を抱き締めれば、少し苦しそうに息を飲む音が聞こえてハッと体を放す。 目が合うとアンジェリーは血だらけのまま、いつものように優しく微笑んだ。 ………女の嘘に騙されて、言い訳も聞かずに殴ってしまった俺を快く許してくれたアンジェリー。 大切にしたい。 守りたいと思ったはずなのに。 そんな子の成れの果ての姿に胸がズキッと痛む。 泣きながら謝る俺を受け止めるように華奢な手が俺の背中を撫でる。 どうして、こんなにも傷だらけで人を受け止めることができるんだろう。 アンジェリーの優しさがどうしようも無く切ない。 「ごめん……!」 ……もうお前の優しさに甘えたりはしないから。 この子への罪はしっかり向き合おう。 教員免許を剥奪されても、警察に捕まってもいい。 アンジェリーが俺に向き合ってくれたように俺も自分の罪に向き合うよ。 こんなにひどいことをしたのに、初めて気持ちを受け止めてもらえて、今まで邪険にされた全ての恋が救われたような気がした。

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