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軟禁チョコレート
あまりの出来事に千を思いっきり押しのけてニットの裾を下に引っ張る。
「なにしてんの!?ほんとなにしてんの!?」
キスとか愛撫しながら優しく脱がしてくれる千らしくない行動につい慌ててしまう。
「いいから脱げ」
「やだ!!こんなところでとか絶対いや!!」
千が何をしようとしてるのかわからず、オレの服をさらに脱がそうとして来る手から必死に逃げる。
大体、ここキッチンだしこういう衛生的にどうなのってところでするような人じゃないはずなのに。
ばたばた暴れてると、千に手を捕まれ顔を合わされる。
「リチェール。お前バレンタインどうしたっけ?」
「へ……バレンタイン?」
なに?今さら。
そういえば色々ありすぎて忘れてたけど、あの日はバレンタインだった。
「た、叩いてごめんね?」
「そっちじゃなくて、渡すもんがあっただろ」
千の胡散臭い笑顔が余計に怖さを膨張させる。
千に渡す予定だったチョコどうなったっけ、と思い返してさあっと血の気が引いた。
「踏まれてぐしゃぐしゃだったから……」
「で、どうしたわけ」
「……気を遣って、久瀬先生が……その、食べてくれた……けど ……」
びくびくしながら答えると、ぴきっと眉間ひきらせながら笑う。
「もちろん、作ってくれるんだよな?久瀬に食わせたやつより愛情込めて」
「……千、意外とねちっこいよね」
思わずポツッとこぼれてしまった言葉の失態に気付いたのは千が黒い笑みを深くしたときだった。
「へーーーぇ?」
「あ!嘘です!嘘です!愛情込めて作らせてください!なんでもします!」
わー!と、焦って抱き付くと、また失態に失態を重ねることになってしまったことに気付いたのはあとになってからだった。
「じゃ、作って。リチェール」
ようやく少し機嫌を直した千が妖艶に微笑んでオレの額に優しくキスを落とした。
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