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軟禁チョコレート

千side 恥ずかしさに震えながらキッチンに立つリチェールの後ろ姿に、思わず緩んだ口元を手で隠した。 エプロンは後ろでクロスして紐を前で結ぶデザインだから、胸も、前も、尻も、どこも見えない。 それでも際どい太ももや真っ白な背中、それから真っ赤になった耳がかわいくて思わず凝視してしまった。 毎日手料理をかかさないやつだから、緊張してるにしても手際はよく、着々と進んでいく。 そんな姿を見てると少し、意地悪してみたくなる。 焼き上がったケーキに溶かしたチョコレートをかけてリチェールがほっと息をついたことを見計らって立ち上がると、リチェールがびくっと振り返る。 「な、なに……?」 怯えた子猫のように一歩後ずさる。 「別に?水」 そういって横を通りすぎ、冷蔵庫を開ける。 けれどまだリチェールは警戒したようにすこし距離をあけて、しばらく俺を見ていた。 俺がミネラルウォーターを取り出すのを確認するとようやくほっとしたようにまた下のケーキに視線を戻し横にメレンゲクッキーを並べていく。 リチェールの下を向くとき長めの髪を耳にかける仕草が妙に色っぽい。 静かに近付きわざと耳元でそっと囁いた。 「あとどれくらいで出来る?」 「ひゃっ」 またびくっと大袈裟なほど体を跳ねさせて逃げようとするリチェールをキッチン台と腕の中に閉じ込めて逃げ場をなくす。 「も、も、もう、できるから……」 視線を合わそうとせず下ばかりを見るリチェールに、さらにイタズラ心に火がつく。 さすがに料理をするところで、どうこうする趣味はないけど、やっぱりリチェールはいじめたくなるものを持ってると思う。 「もうってどらくらいだよ。先にこっち食べていい?」 「ん……っ」 エプロン越しに、カリと爪で胸の突起を撫でれば簡単に甘い声を漏らす。 リチェールの体に負担をかけないようにと、二週間待った。 そろそろ、この俺の気持ちを全く信用しないバカにお仕置きをしていいだろう。 「こ、ここキッチンなんだけど……」 「さすがにここではしねぇよ。 でも少し触らせろ」 作ろうとしてるものはもう完成に見え、あとはデコレーションとかなんだろう。 包丁や火は使わねぇよな。 作りながらも物をきちんと片付けていたのか危険なものは近くにないことを確認して真っ白な太ももに手を滑らせた。 「やっ!」 「や、じゃない。こんな所でされたくなかったら、ほら手動かせよ」 俺を押し退けようとする体を包んでケーキに向かい合わさせその背中に舌を這わせた。 ぷるぷる震える手でリチェールは出来上がったザッハトルテにデコレーションをしていく。 オムライスに旗をさしてみたり、カレーの具材がハートや星の形をしていたりと、リチェールはこういうチマチマした小細工が好きで、本当はもっと時間をかけてしたいのだろうけど、焦ったように仕上げていく。 そのせいか、器用なリチェールには珍しくザッハトルテに最後にコーティングしたチョコの余りが入ったボウルを手にかけてこぼしそうになっていた。 そんな余裕のない姿を見てると、優しくしてあげたくなるような、いじめたくなるような葛藤が生まれる。 「ひ……っ」 細い腰を後ろから抱き締め、肩に頭をのせた。 「こんな所でしねぇっての。そんなに怯えんな」 「や、息が……く、すぐったい…っ」 「息って。いつもより敏感だな」 はっと笑って首にキスをする。 「んっ」 びくんっと揺れてリチェールは手を止めた。 そのまま、エプロンの上から体を撫でるたび、震えるように反応するリチェールに俺も次第に歯止めが効かなくなっていく。 「はぅ……っ」 きゅっと胸の突起を摘まむとリチェールはその場にうずくまろうとして、俺の腕に捕らえられる。 するっと内太ももの際どいラインを撫でて焦らした。 「ん、んん……っ」 余りにも震えるその姿に、そろそろ本当にやめてと泣き始めるかも、と苛める手を止める。 けれど、リチェールは縋るように俺の服を掴んだ。 「せ、千……」 それから絞り出すような声で俺の名前を呼ぶ。 その声は小さすぎて、屈んで顔を近付けた。 「なに?」 聞き返すと、リチェールはそろそろと顔をあげて振り向く。 「も、先にしよ……?オレが限界……」   苦しそうに惚けた表情ですがるように俺に抱きつくリチェールに思わず口元を手で覆って目をそらした。 限界は、こっちだっての。

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