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天邪鬼
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「ちょっと純ちゃん!さっきのお母さんなんでしょ?なんであんなひどいこというの?」
後ろから追いかけてくるルリを無視して一本道を突き進む。
あんなところを見られたことが恥ずかしくて、あの場を逃げ出した。
感情がぐちゃぐちゃで、今は誰とも話したくないのになんで放っておいてくれないんだろう。
「純ちゃん!待って!今なら間に合うからちゃんと謝ってきなよ!」
「うるっせぇな!」
カッとして振り返ると、ルリがびくっと止まった。
間に合うとか、どうとか、お前が決めんな!
やり場のない感情をぶつけてる自覚はあるのに、止まらない。
「関係ないだろ!ほっとけよ!」
とにかく一人になりたくて声を張ると、ルリが悲しそうに瞳を揺らした。
「……ほっとけないよ……だって純ちゃん……すごく傷付いた顔してる……」
「はぁ!?うざい!」
「うざくていいよ!そんな顔した純ちゃん1人にできない」
ルリが珍しく声を荒げる。
気を遣ってくれてるのはわかるけど、それすら今はカンに触った。
「なんなんだよ!散々大切だとかなんとか言っておいて、人の心配も知らないでいつも勝手に突っ走ってるやつが今更なに?悪いけどお前の言葉とか1番信用できないんだけど!!誰にでも適当に優しい言葉言っとけばいいっておもってんだろ!?俺のことなんてどうでもいいって思ってるくせに!!」
また感情のまま口を開いてしまう。
街ゆく人がざわざわと振り返った。
こんな思ってもないこと、言いたくないのに、だれか俺を殴って止めてくれ。
「そんなこと思ってるわけないだろ!」
「自分がうまくいったからって俺に押し付けんな!
大体、お前父親からずっとレイプされて母親にも身代わりにされてたんだろ!?お前だって愛されてないじゃん!それでよく人の家庭に……」
バン!!と、でかい音が響いて、びくっと言葉が止まる。
ルリが横にあった展示板を殴って鋭く俺を睨み付けた。
その冷たい視線に胸を強く切られたように痛み息を飲む。
固まる俺に、ルリは感情を押さえるように深くため息をつき、にこっと他人見せるような貼り付けた笑顔を作って顔をあげた。
「………ごめん。オレなんかに何言われても意味ないよな。図々しく踏み入ったこと言ってごめん。もうこの話は二度としない」
突き放すような冷たい笑顔に、声がすぐにはでない。
「ル……」
「純也も落ち着いたら早く雅人さんのところ戻ってね。ごめん。オレも少し頭冷やして戻る」
そう早口に言って、ルリは作り笑いのまま俺の横を通りすぎた。
気を遣って気持ちを落ち着かせようとしてるのと、こんな状況でも俺を心配してくれてるんだとわかる暖かい言葉のはずなのに。
他の人に向けるようなルリの冷たい笑顔と、別に初めてではない純也と言う呼び方が悲しくて、俺も逃げるように背を向けて反対方向に向かった。
ふと振り返っても、ルリは後ろ姿で追いかけてきてくれない。
違うのに。
あんなこと思ってもない。
親からあんなことされても、笑って許せたルリが羨ましくて、そうなれない自分が悔しくて出た言葉だった。
俺の言葉いつも、大切な人を傷付けてばかりだ。
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