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天邪鬼

リチェールside 純ちゃんがちゃんとみんなの元へ向かう姿を見てほっと息をついた。 「………あー、しくった」 両手で顔を押さえ深くため息をつく。 最悪だ。自分からズケズケ踏み込んでおいて、逆に自分の事つつかれたら逆ギレするなんて。 純ちゃん、余計に泣きそうな顔してたな。 あの傷付いた顔を思い浮かべると、オレも泣きそうだ。 自己嫌悪でどうにかなりそう。 "お前の言葉とか1番信用できないんだけど!!誰にでも適当に優しい言葉言っとけばいいっておもってんだろ!?俺のことなんてどうでもいいって思ってるくせに!!" まるで、愛して欲しいと悲鳴をあげてるようなセリフだった。 大好きなのにな。 優しくて、まっすぐな純ちゃんが可愛くて愛おしくて仕方ない。 千に対する感情とは種類の違う特別な感情だった。 きっとこんなに想ってても、その一割も届いてないんだろうな。 オレの頭、開いて見せてあげれたらいいのにね。 両親のことを言われたのはショックだったけど、その通りな訳だし、オレが両親と決別してイギリスから戻った日、空港まで迎えに来てくれて泣きながら抱き付いてきたことを思うと胸がいたんだ。 何より、純ちゃんは天の邪鬼だから、本当はそんなこと思ってなくて、ついカッとなって言っちゃった言葉だってわかるのに。 短気なのは、オレの方。 何度目にかなるため息をまたつくと、後ろからぽんと肩を叩かれた。 「お嬢さん暗い顔してるけど一人?よかったらお茶しない」 聞こえた声に振り返ると、千がいたずらっぽく笑って立っていた。 荒れていた心が一瞬で緩む。 「千~」 気が付けば、ぶわっと涙が溢れて千に抱き付いた。 「初めてだな、お前らが喧嘩したの」 クスクス笑いながら千は優しく背中を撫でてくれる。 不安を受け止めてほしくて、暖かい胸に顔をすりすりと擦り付けた。 「とりあえずどっか入るぞ。体弱いんだから冷やすな」 「どうしよう〜。純ちゃんのこと傷付けちゃったぁ〜」 「はいはい」 ぐずぐず泣くオレの手を引いて一番近くのカフェに入った。 千がミルクティーを注文してくれて、暖かくて優しい甘さにほっと息をつく。 「純ちゃんに嫌われちゃったかも…… 」 不安を口に出したら、またじわっと視界が滲んだ。 ツンツンしてるのに、引っ付き虫で、寂しがり屋で甘えん坊なあの子に何度癒されたかわからない。 必要とされてるみたいで嬉しかった。 もう膝枕してきたり、飛び付かれることもないのかな。 ……やだ、寂しい。 「大丈夫。嫌われてない。あいつもさっき泣いてたぞ」 千が優しく笑って涙を指で拭ってくれる。 やっぱり泣いてたんだ。 オレ、最低。 「喧嘩なんてお前ら位の歳ならして当たり前だろ」 「でも……っオレ手ぇあげちゃった」 純ちゃんから突き放すような言葉をききたくなくて、黙ってほしくて壁を殴った。 そしたら思いの外音が大きく響いて、怯えたように固まって純ちゃんの顔ばかりが頭に浮かぶ。 「純ちゃんにルリーって抱き付かれたい……」 早く謝らなきゃ。 オレはやっぱり純ちゃんとずっと友達でいたい。 「佐倉がお前らに妬くの少しわかった気がする」 そんなこと言いながらも、千は優しく笑って大丈夫だよと頭を撫でてくれるから、きっと仲直りできるんじゃないかって勇気が込み上げてきた。

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