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天邪鬼
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「雅人ぉ~。ルリに……っひどいこと言っちゃった~」
苦しいくらい不安で、普段は絶対しないのに雅人の服をぎゅっと掴んだ。
「えー、俺には普段からキモいとか消えろとかうぜぇとかいってるじゃん」
クスクス笑いながら雅人は俺の涙を指で拭って、抱き締めてくれる。
「純也が天邪鬼でほんとは優しいことルリくんも知ってるから大丈夫だよ。純也の不安は全部取り除いてあげるからね」
大丈夫だよ、って雅人が優しく笑ってくれて、ぎゅっと胸が包まれたような気になる。
「純也、ここ寒いからとりあえず先に部屋に入ろうか」
雅人に手を引かれこくんと頷く。
普段なら振り払ったんだろうけど暖かい大きな手が今はすごく頼もしくてこの苦しさから連れ出してくれるような安心感がある。
女将さんと雅人が話してる間俺は無言でうつ向いて、案内されるまま個室に向かった。
部屋のことを少し説明して女将さんがいなくなると、雅人が俺を後ろから包み込んで座った。
「純也、体温高いよねー。子供体温あったけー」
ぎゅーと抱き締められ、すりすりと頬を寄せられる。
それを振り払う余裕なんてなかった。
「どうしよう。ルリ、見付かったかな」
今日は3月にしては寒く、体の弱いルリを思うと心配でたまらなかった。
「うん。なんか千くんから保護したって連絡来てたよー。純也と喧嘩しちゃったーって泣いてるって」
ルリが、泣いてる?
あんなに強くて、いつも笑ってるやつが?俺のことで?
喉がひりひり傷んで息がつまる。
俺みたいな最低なやつのことで傷付かなくていいのに。
……ちがう、それだけひどいことを言った。
「純也、怒らないで聞いてくれる?」
ルリのことばかり考えてしまって雅人の言葉になにも考えず、なに。と返した。
「俺さっき純也のお母さん追いかけて挨拶して少し話してきちゃった。勝手にごめんね」
頭を撫でながら言った雅人の台詞に頭が一瞬で真っ白になった。
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