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天邪鬼
雅人side
「関係ねぇだろ!いきなり出てきて母親面すんな!気持ち悪ぃな!」
純也の強がりな声が響いて駆け寄った。
母親面?と、純也の睨む女性を見ると、純也とよく似た顔立ちの女性が純也と同じような傷付いた顔を一瞬だけ見せて笑っていた。
純也はそれに気付いてか気付かずか、同じように傷付いた顔をして逃げてしまい、ルリくんが後を追う。
今追いかけて説得したところで、強情な純也は毒を吐いて自滅して余計に暴走するよな。
それなら。
「千くん子供たちお願いね」
根本的な問題を少しつついてみよう。
早足に離れていく純也のお母さんを追いかけた。
「原野さん!待ってください!」
振り返った顔はやっぱり泣きそうな顔をしていて、よく似てる、と思う。
連れていた男性が警戒するように前に立ってきたので、できるだけ物腰柔らかく微笑んだ。
「急に呼び止めてしまってすみません。純也くんの担任の佐倉です」
「純也の?」
お母さんの瞳が動揺したように揺れる。
悪い人には見えないんだよな。
「プライベートでいらしてるところ申し訳ございません。今、純也くんは僕の家で預かっていて、近々ご挨拶に伺おうと思ってはいたのですが、遅れてしまい恐縮です」
「え!あ、ええ!?」
頭をぺこと下げる俺に純也のお母さんがわたわたする。
それから同じようにがばっと頭を下げてきた。
「うちの子がご迷惑をお掛けしてるみたいですみません!」
「迷惑なんてとんでもないです。
あの、少しお話があるのですが、よろしければ後日改めてお時間を頂いてもいいですか?」
「あ、はいもちろんです。いつが都合いいですか?」
「原野さんのご予定に合わせますよ」
純也のお母さんが、えっとえっと、とスマホを開く。
スケジュールを見ようとしてくれてるんだろう。
「今夜こちらに泊まります?僕は仕事の商談があって彼女一人にしてしまうんでその時などいかがですか?」
横にいた男が口を挟み、純也のお母さんが顔をあげる。
「秋菜、息子さんの問題は早く話し合った方がいい。ずっと気にしてたじゃないか」
そう言って彼女の見下ろす目は優しく、この人の人柄の良さが出ていた。
早く話せるなら、そちらの方がありがたいと俺も是非と微笑む。
そのまま、19時に近くのカフェでと約束をし、連絡先を交換してその場をあとにした。
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