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天邪鬼

───── 「は……?母さんと……?」 俺がお母さんと話したことを言うと明らかに動揺して不安そうに見上げる。 「なんで……!?なに勝手なことしてんだよ!」 ドン!と俺の胸を押して離れようとする純也を抱き締めた。 やっぱり怒るよなぁ。 怒るっていうか、怯えてるんだろうけど。 「純也、落ち着いて。俺は今純也を預かってるわけだし、挨拶するのが普通だよ」 「ならすぐ出ていくからやめろよ!」 「出ていかせるわけないでしょ?ちょっとちゃんと話聞いて」 案の定軽くパニックになった純也に大丈夫だから、と背中を撫でた。 「純也、ちゃんと親と向き合った方がいいよ。たとえ突き放されても、思い通りにならなくても」 「お前が決めんな!ていうか話すことなんてねぇし!」 「寂しいなら、納得するまで向き合えって。親がいつまでもいてくれるものだって思っちゃだめだよ」 ハッとしたように純也が俺を見上げる。 その表情は悲しそうに伏せられた。 そう言う意味で言ったんじゃないけど、俺の親が亡くなってることを思い出したのだろう。 「………ごめん」 なにも悪くないのに小さく謝る純也はやっぱり優しい子だと思う。 うつむく黒髪をぽんぽんと撫でた。 「純也には俺がついてるんだから、当たって砕けることはないよ。安心してガンガン当たってこ」 「………うん」 俺の過去のことを思っての気まずさだとしてもやっと素直に頷いてくれた純也をえらいねと抱き締めた。 お前の不安なんて俺が全部取り除くから、笑っていてほしい。 「お母さんと19時に待ち合わせしてるから、それまでにルリくんと仲直りしてスッキリしておこうね」 「………今日?」 「そ、今日」 「わ、わか、わかった」 「大丈夫だよ、純也」 うん、うん、と何度も自分に言い聞かせるように頷く純也に頑張れと励ました。 その時ちょうどポケット中の携帯が震えて千くんから今からルリくんと戻るとの連絡が届いた。

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