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天邪鬼
早足に離れようとすると後ろから舌打ちが聞こえてガコン!と大きな音が響いた。
びっくりして立ち止まると、大介君が自販機の横のゴミ箱を蹴ったのかあたりには空き缶が散乱している。
「純也の分際で何スカしてんだ!?あ!?」
ああ、こういう奴だった。
短気で、少しでも反抗しようものなら手が出る単細胞。
それでも無視してまた歩いた。
「お前さぁ、ずいぶん前より女らしくなってるけど、母親と同じで売女になってんの?きっもち悪ぃな!聞いてんのかよ!?」
性格は変わってないのに、言ってくる内容は悪質さを増していた。
悔しい。
母さんのこと悪く言うな。クソやろう。
でも、俺は喧嘩なんかしたことないし、今突っかかってルリまで巻き込むわけにはいかない。
……握った拳が痛いほど悔しいけど、ルリならきっとこれくらいで怒らないだろう。
ケラケラ笑う声が悔しくて、口に血の味が広がるほど強く唇を噛んだ。
「また前みたいに体に書いとけよ!自分は父親がだれかも分からないようなビッチが生んだ子供ですってよ!!ははは!!!」
ルリ、なら、きっと、我慢、する。
悔しくさで涙が出そうになった瞬間、繋いだ手を振り払われた。
「え……」
ショックで振り返ると、ルリは手に持ってたココアの缶を大介君の顔面目掛けて思いっきり振りかぶっていた。
「ぐぴ……!?」
それは一瞬の出来事で大介君も避けられるはずもなく見事に命中してよろよろと顔を押さえた。
「ル、ルリ……!」
止めようとした俺の手をすり抜け、すたすたと苦しむ大介君に近付き、一発横っ面に拳を叩きつけると、その胸ぐらを掴みあげガン!と自販機に押し当てた。
「ブヒブヒうるさいんだよ、クソブタ」
その小さくとも迫力のある声に俺までびくっとしてしまう。
大介君の体は縦にも横にもでかくて、並ぶとルリなんて小人のようなのに、大介君は青ざめて息を飲んでいた。
………てか、あいつ、俺が累のことチビブタって呼んだら、そんなこと言っちゃだめーとか言ってなかったか?
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