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天邪鬼
「ルリ!いいから!」
温和なルリの垣間見る喧嘩っ早い一面に動揺しながらも後ろから抱きついて止めた。
自分が言われた訳でもないのになんで怒ったの?
絶対ルリなら笑って許してたはず。
それなのに。
「よくないよ!純也がよくてもオレがムカつく!」
頭いいくせにさ、そんな子供っぽいこと言って、お前どうしたんだよ。
ルリを巻き込んで最悪なのに、どうして俺は今嬉しいと思ってしまってるんだろう。
周りがざわざわしだして、ルリはようやく手を放した。
「血が……血が……っ!」
鼻血が出たことがショックなのかわたわたしてる大介君にルリがポケットからハンドタオルを取り出して彼の鼻に押し付けた。
「……手荒なことしてごめん。でももう純也に関わんないで」
一言そう言うと、呆然と見てるだけの男二人の横をすり抜けて、俺の手を握った。
「行こう、純ちゃん」
その一言に、涙がぼろっとこぼれ落ちた。
小学生の頃、どれだけわかりやすいいじめでも誰も助けてくれなかった。
みんなヒソヒソと遠巻きで見てるだけ。
高校からは悪い友達とバカみたいなことをして自分が強い気になっていた。
そんなことをしても残るのはいつも虚しさだけだったのに。
ずっと一人だった俺の手を小さな手がぎゅっと握って引いてくれる。
「うん……っ」
ルリの手はいつも折れそうなほど細い指と、冷たい温度だった。
それなのに、安心感を感じるその手にひかれその場をあとにした。
歩きながら、さっきはごめんと謝ると、ルリは手を強く握り直して同じように謝ってくれた。
小学生の頃の俺に言ってやりたい。
お前さ、今1人も友達いなくても将来一生分の最高な友達できるよって。
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