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予感
翌日、バイト先でオレは上機嫌だった。
千と家族になるのだと思うと、思わず口元が緩んでしまう。
「ルリくん、ちょっといい?」
草薙さんに声をかけられて、グラスを拭いていた手を止めた。
「はぁーい」
店頭ではできない話らしく、そのまま個室に呼ばれる。
ドアを閉めると、A4サイズのプリントを3枚ほど手渡された。
受け取りながら、軽く目を通すと、とある敷居の高そうなホテルの資料だった。
「有名ですよねこのホテル。どうしたんですかー?」
「そこのオーナーが俺の知り合いなんだけど、最近すごい人員不足らしいんだよね。で、うち人員今潤ってるでしょ?」
あー、何となく話が読めたかも。
案の定草薙さんは苦く笑った。
「相手のオーナーがどーーーーしてもルリくんがいいって言うんだよね。接客対応見てて、丁寧でレストランのホールの即戦力間違いないって思ったらしくて。もし嫌じゃなかったら、あと一人一緒に連れていくスタッフ選んでいいから一ヶ月だけどうかな?」
今までのオレならその場で分かりましたって言っていただろう。
いい経験になるだろうし是非いきたいけど、一人では決められない。千に相談しなきゃ。
「ちなみに、時間帯とかってどうなりますか?」
「土日は絶対出てほしいって。平日は合わせるらしいよ」
それなら、まぁ。
「すみません。少し考えさせてください。家の人と相談してみます」
「俺としては絶対貸したくないスタッフだから断ってくれてもいいからね」
「あはは。ありがとうございますー」
じゃあ、お店に戻ろうかと背中をぽんと押され二人でお店に戻った。
千は何て言うかな。
お酒を提供するバーのバイトをよく思ってなかったから、ホテルのレストランのホールならそっちの方がいいって言いそうだけど。
________
「………お前来年は受験だろ。そろそろやめるって選択肢はないのか」
迎えに来てくれた千に家についてその話をすると、違う方向から話が降ってきた。
「オレ、そうそう受験落ちないと思うよー?滑り止めもちゃんと受けるし大丈夫だもん」
「…………」
「やだ。働いていたいー。オレ色んな経験したい。お願い千」
難しい顔をする千に抱き付いて甘えてみる。
「……成績が落ちたり、無理してる様子が見えたら問答無用で即刻やめてもらうからな」
お願いと言えば甘えさせてくれる千に、やったー!と飛び付いた。
あんな敷居の高いレストランにバイトだとしても働けることはそうそうない。これは将来への経験を積むいいチャンスだ。
わくわくしてきて、すぐに草薙さんは電話した。
もう一人連れていくスタッフは光邦さんか暁さんがいいと伝えると、光邦さんに抜けられるのは痛手らしく、暁さんに決まった。
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