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予感

次の休み時間、すぐリチェールを呼びに教室に向かうもいなくて、もしかしたら泣いて教室に戻れなかったのかもしれないと胸が痛んだ。 そのまま学校をサボって帰ったとわかったのはHRが終わってからだった。 4限目の移動教室をサボってそのうちに鞄をもって帰ったらしく原野や佐久本すらすぐ帰ってることに気付かなかったらしい。 電話もとらないし、段々と焦りが濃くなる。 ただ言っても甘やかしても言うことを聞かないから、反省させたかった。 危険な目にあってほしくない。 キスされていたことも許せなかったし、それを黙っていたこともショックだった。 根気よく危険だから俺にちゃんと言えと何度も何度も言うべきだったと、リチェールのあの表情が頭によぎっては深いため息をついた。 バイトが終わる時間に車で迎えにいこう。 少しでも早く謝って、抱き締めたい。 「は……?」 家に帰って、さっと血の気が引く。 何となく雰囲気が違ってひどく殺風景に見える。 机にはひとつ置き手紙があった。 その内容はリチェールの几帳面な字で、書き綴られていた。 ポストに鍵は入れておいたこととか、今までありがとうとか、読み進めるほど心臓が嫌に早鐘を打つ。 急いで確認すると、元々そんなに量はなかったとは言え、リチェールの私物がすべてなくなっていることに気付いた。 あいつ、早退したのはこの為か。 舌打ちをして、その置き手紙をぐしゃと握り潰した。 こんな状況でもあいつは仕事にはちゃんと行くんだろう。 さすがに仕事中のリチェールを泣かせるわけにはいかないと、嫌に長く感じる時間をまって早めにリチェールのバイト先の裏口の前に車を止めた。 メッセージはいつまでたっても既読はつかず、たぶんブロックされたんだろうと思う。 裏口が開いて、顔をあげるとリチェールの仲のいい先輩の一人がごみ捨てに来ていた。 「あれ?月城さん?どうしたんすか?」 「リチェール迎えに来たんですけど、もう終わりそうですか?」 茶髪の先輩は、きょとんと首をかしげる。 「あれ?ルリから聞いてません?夕方急に決まったことなんですけど、インフルエンザで人手がかなりたりないらしくて急遽今日から暁とホテルの方出勤ですよ。まぁ今暁から連絡あって終わったみたいですけど」 その言葉に焦りがさらに募る。 いよいよ本格的に捕まえ方が限られてきた。 明日の学校で捕まえるのが一番確実だけど、今夜あいつどこで寝泊まりするつもりなのか気が気じゃない。 頼むからフラフラしないでほしい。 あいつの帰る家をなくして自分のところに引き込んだのは俺だ。 今リチェールには帰る場所がない。 もう3月とは言え夜はまだまだ寒く、なによりリチェールの容姿は男を引き付けるものなのに。 「っくそ。どこだよあのチビ」 悪かった。 ちゃんと謝るから一秒でも早く腕のなかに戻って来てほしい。 早くあいつを抱き絞めたかった。 今さらになって膨れる嫌な予感に小さく舌打ちした。

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