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タイムラグ
雄一side
「おい、累!止まれって。お前だってルリ相手に妬いたりしないだろ?」
早足にオレの手を引いて歩く恋人の手をぐっと力を入れて止める。
キッと振り返った累の顔は真っ赤だった。
「妬くに決まってるでしょ!幼馴染みとか知らないよ!」
「累……」
思わずきゅんとしてしまう。
そっか、こいつもう月城先生じゃなくて、ちゃんと俺のことを好きなんだ。
もしかしたら、ルリの記憶がないことをいいことに月城先生にアピールを始めるんじゃないかって焦った自分が恥ずかしい。
「悪かったよ。機嫌直して」
そっと抱き寄せると、まだムッとした表情をしながらもぎゅっと抱き返してきてくれる。
素直な恋人に思わず口元が緩んだ。
「……なぁ、でもやっぱりルリ一人にするの心配なんだけど」
「だめ!甘やかしすぎ!月城先生に丸投げでいいの!今一番ルリくんが頼りにしてるのは雄一なんだから、下手に介入しちゃややこしくなるでしょ」
ややこしくなるって……。
自分で言うのもなんだけど、今あいつには俺しかいないんだから、俺が仲介に入ってあげるべきだと思うけど。
それに、俺がルリの家庭環境を知ってると言ったときの青ざめた表情がどうしても気がかりであのままにはしておけなかった。
「ならさ、せめて……」
「ほら早く歩いてよ。保健室行って月城先生呼んで来なきゃ」
思っていたことが、累の言葉と重なる。
「……お前そんなにルリに優しくできたの?」
累の行動が意外すぎて、思わずそう聞くと、はあ?と顔をしかめられた。
「ルリくんがこれ以上雄一にべたべたして雄一がルリくんにとられたらたまったもんじゃないもん。そうならないためにしてるだけだよ」
ふんっと鼻をならしてズカズカ廊下を進む背中に、あっけにとられる。
ルリが事故に遭ったって聞いた時、なきそうなかおしてたくせに。
本当、強くなったよな、こいつ。
こんなわがままな部分も可愛いと思えてしまうんだから、俺も重症だ。
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