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そしてキミは

リチェールside 本当は働いていたかったけど、バイトをやめたと言った時の千のホッとしたような穏やかな笑顔にこれでよかったのだと思えた。 オレの安っぽいプライドに付き合っていてくれた千への負担は大きかっただろう。 お金だって、どれだけ稼いだって千は受け取ってくれないし遊びに行くのだってお小遣いまでくれる。 それでいて体調も崩し勝ちで心配をかける一方だったんだから、本当に申し訳ない。 「バイトやめたからこれからは晩ごはんも毎日一緒に食べれるねー」 「それは楽しみだな」 うん、オレも楽しみ。 休みの日だってバイトを気にしないで朝から晩で一緒にいられるんだから。 どうせオレがちゃんと就職活動して働きだしたらこうはいかない。 今できることは惜しみ無く楽しんでしまおう。 それに、これでもう千があの人の言いなりになることはない。 「千のお父さんあれから何か言ってきた?」 オレの質問に、千はタバコの火を灰皿に押し付けてふっと笑う。 「ああ、離縁することにした」 「え!?」 「まぁ案の定騒いでるけど、本来なら脅す立場はこっちだからな」 ふん、と勝ち誇ったように笑う千に戸惑う。 いつそんなことになったの?オレが寝てる間に? 「今まではどうでもいいから放置してたけど、リチェールがあんなにかっこよく啖呵切ってくれたからな」 「……千はどんどん自分で解決していっちゃうねぇ」 嬉しいことだけど、寂しくもある。 頼ってるのはやっぱりオレばかりだ。 そんなオレの気持ちを察してか、千がオレを抱き上げて膝に乗せた。 「リチェールが強くしてくれるからな。ようやく抜け出せた」 これは千の優しい嘘だろう。 オレはいつも強いこの人の弱みにしかならないのに。 本当は一人でなら何だってできる人だってわかる。 でもその言葉が嬉しくて胸に顔を埋めた。 やさしく髪を撫でられて、キスをひとつ落とされる。 スカイブルーの瞳にオレが映って、優しく細められた。 「今日は少し予定がある。もう少しこうしていたいけど、リチェールも出かける準備をしてくれ」

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