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それから車が着いた先は、家ではなくショッピングモール。 正直運転が肝を冷やすレベルで、どこに向かうのか聞くどころか、会話する余裕はなかった。 「歯ブラシとー、歯磨き粉とー、あ、瑞稀くん、シャンプーとかコンディショナーこだわりある?」 「へ?いえ……」 「じゃあ、歯ブラシは硬いのがいいとか、柔らかいのがいいとかー」 「特には……」 「じゃあオレがいつも使ってるやつにしよーねー。柔らかくて気持ちいいよー」 どうして僕に聞くんだろう。 何を買いに来たのか全くわからない。 ルリさんは、指を折って数えながらいろんなものをカゴに入れていく。 「あ、すみません!僕、カゴ持ちます!」 「怪我してる子に持たせるわけないでしょー。あ、このコンディショナーめっちゃいい匂いなんだよー。香り見本嗅いでみてー」 「いえ、これくらいの怪我……」 「ほら、早く嗅いでー」 グッとビーズの入った透明の見本を近付けられ、マスカットのいい香りが鼻をくすぐる。 わ、本当にいい香り。 「どう?この香り好きー?」 可愛らしい顔を近づけてニコッと笑う。 この人、お国柄かな。 いちいち近くて、ドキドキする。 うん、ルリさんによく似合う香りだと思う。 「……はい」 「よかった。じゃあこれにしよう」 ルリさんに生活用品一気に切れたのかな。 それならおすすめのお買い得薬局があるのに。 ここの値段びっくりするくらい一個一個が高い。 「カード一括で。あと領収書ください」 見覚えのある金色のカードと、聞き覚えのあるセリフ。 それから、よーく会話を思い出してみる。 会計を済ませて、紙袋を受け取ってるルリさんにお店を離れてから恐る恐る聞く。 「……あの、さっきから何を買ってるんですか?」 「え?あれ?言ってなかったけ?」 きょとん、と小さな顔を傾げて、それから「んー」と考えるように顎に指を当てる。 それから僕をみて、にぱっと笑った。 「言ったら瑞稀くん、いいですいいですぅ!ってうるさそーだしナイショ♪」 これ、僕の生活用品買ってるんだ!! この人わざと黙ってたでしょ。 「い、いいです!僕のものを買ってくれてるなら本当にいりませんから!!」 「オレ何買うか言ってないもーん。はい、次は下着とお洋服ね。レリゴーレリゴー」 僕の手を当たり前のように繋いでぐいぐい引っ張って歩くルリさんに、どれだけ買わなくていいと言ってもカゴに物を詰める手は止まらなかった。 「ていうか、それ四季さんのカードじゃないんですか」 「清十郎がオレにお使い頼んだんだもん。オレを止めたいなら清十郎に言ってー。あ、ところでボトム何インチ?」 「…教えません」 「わぁ、そういうことするー?いいもん。今ねー、ジャージみたいによく伸びるボトムあるんだよー。それはサイズざっくりSMLだからそれのS買おー」 「っルリさん!」 「なぁに?瑞稀くん♪」 なぁに、じゃないし。分かってるくせに。 この人の笑顔、天使みたいだなって思ってたのに今は小悪魔にしか見えない。 四季さん。 ルリさんに二面性あるって話、本当だね。

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