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向けられた色鮮やかな花束と、ルリさんの笑顔に一瞬言葉が理解でしなくて固まる。
「え?ぼ、くに、ですか……?」
「そうだよー」
当たり前じゃん、って笑うルリさんの言葉を理解すると同時に目頭が熱くなって、咄嗟に顔を背けた。
「………っ」
今声を出したら、泣きそう。
そこにいるだけで周りの人みんなに迷惑そうな顔をされて、早くいなくなってくれたらいいのにってずっと言われて来たのに。
「……っれ、しいです」
大きな花束を両手で抱きしめると、カサカサと腕の中でルリさんの想いが揺れる。
どうにか涙は堪えたけど、声は震えてしまった。
「うん。オレも受け取ってもらえて嬉しい。
今日からの生活、不安もたくさんあるだろうけど頑張ってね」
ルリさんの笑顔に、少しだけ勇気をもらえた気がした。
「じゃあ、そろそろ清十郎を迎えて次の現場に行かなきゃいけない時間だから行こうか」
左手にはめられた腕時計を確認して、歩き出したルリさんの半歩後ろをついて歩く。
いよいよ、四季さんと昨日以来の対面だ。
じとっと手のひらに汗が滲んで、一度深く深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
大丈夫。
一年だけだし。
ルリさんからの心強いお花もあるし。
「大丈夫だよ、瑞稀くん。
昨日も言ったけどアイツ悪い奴じゃないから」
僕の不安を見透かしたように笑って、ルリさんは車のエンジンをかけた。
あーあ、このままルリさんとのドライブが終わらなきゃいいのに。
_____とか、思ってた数分前の僕をぶっ飛ばしたい。
ドがつきそうなほど下手な運転に、何度も心の中で神様に変なこと考えてごめんなさいって謝りながら、早く目的地に着くことを願った。
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