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「あの、本当にすみませんでした!」
もう10回目になる謝罪にルリさんはくすくす笑いながらハンドルを握る。
「怒ってないってば。すみませんでしたは禁止〜」
「でも……」
僕に対しては笑顔を見せてくれるルリさんはまだ謝ろうとする僕の声を遮って「ていうか」と、後部座席をルームミラー越しに睨んだ。
「後ろのやつの方がムカつく。いつまで笑ってんの清十郎〜」
ちらっと見てみれば、涙を浮かべるほど笑っていた。
「ルリは確かに身長も男にしてはチビだし、女顔だけどさ、一人称オレだし、スーツとか革靴とかもろ男物じゃん」
やめてよ。
もう蒸し返さないで欲しいんだけど。
そんなこと、元凶の僕が言えるはずもなくて、ごにょごにょと言い訳をするように小さく答えた。
「……ファッションに疎くて……」
「はは。そんなレベルじゃなくない?
てか、瑞稀も普通に女の子に見えるけどね」
そう。僕も散々間違えられてきたからわかる。
逆もそうなんだろうけど、男が女の人に間違えられるの傷つくよね。
「ルリさん、本当に……」
「はい。謝るのはおしまいだってば〜。いいよ、これからも助手席に乗ってくれるなら。それでチャラね」
ね?と笑うルリさんに、胸がギュッとする。
面白いことの一つも言えなくて、失礼なことを言ってしまったのに、病院からのお迎えの一回限りじゃなくて、これからも会えるって言ってくれるんだ。
「ねぇルリのこと女って思いながら一緒にパンツとか買ってる時の気持ちってどうなの。興奮した?」
「黙れ清十郎」
クククと笑ながらまだそんなことを言ってくる四季さんをルリさんがルームミラー越しに睨む。
いや、ほんと黙れって思う。
ルリさんは一度ため息をつくと、呆れたように笑った。
「清十郎って滅多に笑わないから、ほぼ初対面でここまで爆笑させれるのはすごいね」
すごいのかな。
ちっとも嬉しくないけど。
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