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ピピピと大して大きくもない音が響いてゆっくり意識が覚醒した。
目を開けないまま手だけ伸ばして、ベットヘッドの置き型充電器の上からスマホを取るとアラームを止める。
ルリが迎えにくるまであと1時間。
軽くシャワー浴びて、着替えて、コーヒー飲んでニュースをチェックする。
これがいつものルーティン。
起き上がって一度大きく伸びると、バスルームに向かった。
「……あ、おはようございます」
ばったり廊下で鉢合った瑞稀は、目があってすぐ気まずそうに視線を逸らした。
気にしないけどさ。
そんなにビクビクしなくてもいいじゃんね。
「おはよ。起きるの早いな。昨日寝れなかった?」
「いえ、ゆっくり寝れました。4時に起きることが癖になってて」
「え。じゃああんま寝てないじゃん。ルリとショップに行くまで全然時間あるし寝てなよ」
「柔らかいベットのおかげでしっかり休めました。大丈夫です」
「そっか」
ならいいけど。と瑞稀の俯いた黒髪を撫でてみる。
コイツ下ばっか見るからついこの丸っこい頭撫でたくなるんだよな。
昨日みたいに振り払われはしないけど、どうしていいのかわからないように体を強張らせる瑞稀から手を引いた。
「シャワー浴びてくる。リビングのテーブルの上かカウンターの上にリモコンあるからテレビ好きなの見てなね」
「ありがとございます。あ、えっと、それと、お台所お借りしてもよろしいでしょうか?」
「だから自分の家だと思えって。許可とかいらないから好きにどうぞ。冷蔵のものとか好きに食べたり飲んだりしろよ」
「……はい」
あ、また気まずそうな顔。
そりゃ無理矢理連れ込まれた家を自分の家だなんて思えないよな。
少しずつでもこの家が居心地のいいと思える家になればいいけど。
家というか、この世界が一年後には自殺なんて忘れるくらいに瑞稀の居心地の良いものになればいいのに。
「あ、引き止めてすみませんでした。シャワー浴びるんですよね」
「ん?うん。じゃあゆっくりしてて」
そんなことでいちいちすみませんとかいらないっての。
そんなこと言ってみても、気まずい顔するだけだろうからもう言わない。
無意識の口癖になってるんだろうし。
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