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「あの、ルリさん、朝ごはんは済まされましたか?」 「うん、食べてきたよ。あ、もしかしてこのスープって瑞稀くん作?」 躊躇いがちに頷く瑞稀にルリは穏やかに微笑んで「美味しそう。少しもらおうかな」って言うけど、お前胃弱いんだから朝からそんなに食ったら胃痛になるだろ。 ディレクターに誘われた食事会で無理して出されたものを全部食べたあと笑顔で見送ったかと思ったら見る見る真っ青になったこと、忘れてないからな。 そのあとの自分の運転でさらに気持ち悪くなってただろ。 「お前、朝そんなに食べれないじゃん。ほら一口だけ味見くらいにしときな」 スプーンですくってルリに差し出すと、いただきますと一言瑞稀に言って顔にかかった髪を耳にかけながら屈んで口をつけた。 「わ。すごい美味しい。お腹ぺこぺこにしてこればよかった〜」 「美味いよな」 「瑞稀くん今度作り方教えて〜。これうちの人にも食べさせてあげたい」 「はい」 美味しいと言われて、ホッとしたように顔を緩める瑞稀にルリも笑顔を返す姿はなんだか微笑ましい。 ルリと住んだ方が手っ取り早く自殺とかアホな考えなくせそうだな。 だからってルリに任せるつもりはないけど。 「ルリ、そろそろ」 「あ、うん。行こうか」 ルリもちらっと腕時計を見て同じことを思っていたようで、俺も残りのスープを全部飲み干して、席を立った。 「四季さん、食器は僕が洗いますから」 皿を持って立ち上がると、瑞稀に止められた。 皿洗いなんて水で軽く流して並べるだけで食洗機がやってくれるし20秒くらいで終わる作業だけど、断ったら気まずそうな顔するんだろうな。 「ありがとう。食洗機の使い方わかる?水で流してそこに並べるだけでいいからね」 「はい」 サングラスとマスクをつけて、玄関へと向かうと、後ろからルリと瑞稀もついてくる。 「じゃあ瑞稀くん。10時過ぎに迎えにくるからね〜」 「はい。ありがとうございます」 「行ってくる」 「はい。えっと、お二人ともお仕事頑張ってください」 靴を履いて、瑞稀に振り返るとどこか不安げな顔をした瑞稀の小さな頭を撫でてそのままドアを開けて家を後にした。

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