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この遺書を読んで、すぐ警察に知らせるべきだと思った。 でも、俺を庇って車に轢かれたことや、病院で話した時の様は、とてもこの遺書に書かれてる人物像からかけ離れていた。 たしかに叔母夫婦に怯えているような素振りは見えたけれど、それはここに書かれている事件の発覚を恐れてともとれる。 でも、その事件がどんなものかわからないけど、死ぬくらいなら自首するだろ。 瑞稀の性格なら尚更。 声をかけただけで謝るようなやつだぞ。 濡れ衣を着せて警察に出頭させなかったのは、瑞稀がこんな性格だからすぐ嘘がバレると思ったんだ。 だから、口を封じてしまいたいんだろう。 「瑞稀くんは何に巻き込まれてるんだろうね」 やっぱりルリも同じことを思ったようだ。 「それを一年以内に明るみにする」 「うん。協力するよ」 普通、芸能人のマネージャーなら大事になることを恐れてすぐ警察に連れて行くだろう。 けれどルリは出会った時と変わらない笑顔で俺の背中をぽんっと押すだけだった。 「本当に優しい子だね、清十郎は」 「……まぁ瑞稀には命助けられた恩もあるし」 「照れんなよー」 華奢な人差し指が揶揄うようにぐりぐりと俺の頬をつつく。 こう言う話を空気を重たくしないようにしてくれるのは、俺のエゴでルリまで巻き込んだ罪悪感を少し軽くしてくれるようだった。 「ねぇねぇ今更だけど瑞稀くん連れて歩いた方が良くない?留守中に万一ってことないかな」 「ないだろ。昨日結構な金額使ってたじゃん。あいつそう言うの無駄にするの申し訳ないとか思うタイプだろ」 「ああ、そうね」 ルリが納得したように頷く。 本当に死にたいなら、他人のことなんて知ったことじゃないし全部投げ出すんだろうけど、あいつはそうじゃない。 昨日買った日用品や選ばせた花瓶だって、一つ一つが俺に無駄金を使わせた罪悪感で小さくとも引き止めるだろう。

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