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駐車場に着いて後部座席に座ると、ルリはエンジンをかけながら、また静かに口を開いた。 「瑞稀くんが自分から話し始めるまで、踏み込んで話聞いたらダメだよ。あの子、自覚があるのかないのかわからないけど多分男の人苦手だと思う」 話し始めた内容が思ってもみないもので、少し反応に遅れる。 「なんでそう思うの」 「清十郎よりオレに懐いてるじゃん」 大体のやつは俺のファンじゃない限り、俺よりルリと仲良くなると思うけど。 それはルリと俺の人当たりの良さの差じゃん。 ルリは俺の表情から言いたいことを察したのか、言葉を続けた。 「最初は清十郎が無表情すぎてとっつきにくいからかなとか、自殺を脅す形で止めるからかなって思ってたけど、それならオレもグルに見えるはずだよね」 「そうかな?」 「そうだよ。それに、オレがさっき揶揄った時さ、"心配になる。自分の顔の良さ気をつけた方がいい。男でもドキッてするくらい可愛い"って言ってたじゃん。 多少見てくれが女性に似てても、男ってわかったら普通そう言う対象から外すよね。 男が男にそう言う感情向けることとか、それを気をつけた方がいいって言うこととか、何かないと出ない言葉じゃない?」 言われてみたらたしかに。 ルリに可愛いとか、心配になるとか言うからまだこいつの腹黒さに気付かないなんて、アホほどピュアだと思ったけど、普通男が男に劣情を抱くなんて思い付きもしない発想だ。 「え、それなら俺と暮らすの相当ストレスなんじゃない?」 「男の人は怖くないよってこと清十郎と過ごしてたら伝わると思うよ。大丈夫」 ルリは一度振り返って、柔らかく笑って見せた。 さっき自分で俺のこととっつきにくいって言ってたくせに、どっから来るんだよその自信。 「瑞稀くんの家庭環境に探り入れるのはオレがやる。 一緒に生活する同居人に探られるの嫌だろうし。清十郎はストレートに聞くことしかできないでしょ。多分そう言うのオレの方が得意だし」 「悪い。助かる」 「うん。任せなさい。清十郎にはもっと大切な瑞稀くんに自殺を諦めさせるって言うお仕事があるからねー。居心地のいい家にすること頑張って」 出来るだろうか。 相手はあの気の毒になるほどの気遣い屋だ。 "ご飯作ってありがとうって言ってもらえるなら、これから毎日作ります" 溢れそうな涙を震えながら必死に耐えてる姿を思い出して、胸の奥が小さく痛んだ。 出来る出来ないじゃないよな。 あんなにもいい子が、自分の良さにすら気付けないまま、自ら命を経っていいはずがない。 「……頑張るよ」 俺の言葉に、ルームミラー越しに目が合ったルリは満足そうに笑った。

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