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第2話

side瑞稀 四季さんとルリさんが仕事に出て3時間。 掃除をしようにも隅々までピカピカのこの家ではやることもなくて、お夕飯だけ作ると、暇を持て余してしまった。 テレビ見ていいって言われたけど、電源の付け方もわからないし、見たいとも思わない。 なんだか何もしない時間って落ち着かなくて、そわそわしてたら、ガチャっと玄関の開く音がした。 「瑞稀くーん。遅くなってごめんねー。準備できてるー?」 すぐに聞こえてきたルリさんの明るい声についホッとしてしまう。 カバンも手荷物は何もないから、買ってもらったハンカチとパーカーだけ手に取って玄関に向かった。 「お待たせ。じゃあ携帯ショップ行こうか」 「はい。ありがとございます」 トントンとつま先を蹴って靴を履くと、ドアを開いて待っていてくれてるルリさんに会釈をして2人でエレベーターを降りる。 外は小春日和だった。 「3時間くらい時間あったけど何してたのー?」 「あ、えっと、すみません。洗い物とお夕食の準備しか進んでません」 「ねぇオレってシンデレラに出てくる意地悪な継母にでも見えてるの?家事の進捗聞いてるわけじゃないよ」 なにか間違えたことを言ってしまっただろうか。 ルリさんの言葉を意地悪のように受け取ったつもりはなかったけど、気を悪くさせてしまったかもしれない。 「気を悪くしたならすみません。ルリさんのこと意地悪だって思ったことないです」 「それはうそだー。オレ瑞稀くんに意地悪してる自覚あるもーん。昨日の買い物とか今朝のカフェモカ飲ませたのとか♪」 慌ててそう言ってみても、ルリさんは気を悪くした感じもなく楽しそうに笑う。 この人ちょっと意地悪な自覚あったんだ。 そんな一面すら可愛らしく戯けて見せて、なんだか憎めない人ってこう言う人を言うのかな。 「ハウスキーパー雇ってるし、そもそも瑞稀くんは家事なんてしなくていいよ。 週2で来るんだけど、明日とか会うと思うよ」 「そうなんですね。えっと、僕、そのハウスキーパーさんがいらしてる時間家にいない方がいいでしょうか?」 「どうしてー?居ても全然大丈夫だよー。ていうか、清十郎も忙しすぎて会ったことないくらいでいつも対応オレがしてるし」 じゃあ明日もきっとハウスキーパーさんと2人きりになることはないのかな。 こっそり胸を撫で下ろす。 「さ。着いたよ」 キッと相変わらずの急停車で若干体が前のめりになって、シートに上体がバウンドする。 距離も近かったから酔わなかったし、ルリさんの急発進急停車にも慣れてきた気がする。 駐車場から降りて、ルリさんに着いていくと、出迎えた店舗のガラスには大きく四季さんのポスターが貼られていて思わず体が固まってしまった。 「あれ?言ってなかったっけ?ここのキャリアの広告、清十郎なんだよね〜。CMとかで見なかった?」 「テレビ、見なくて……ちょっとびっくりしました」 疑ってたわけじゃないけど、こうして目の当たりにして、改めて四季さんって有名人なんだって思い知らされる。 いつも無表情なのに、眩しいくらい爽やかな笑顔でなんだか一気に遠い人のように思えてしまう。 「そっか。じゃあ帰りながら何冊か雑誌買おっか。適当にコンビニ入っても清十郎が表紙の雑誌いくつかあると思うよー。 同居人がどんな仕事してる人なのかよく分かってた方が瑞稀くんも安心じゃない?」 「いえ、そんな探り入れるような真似は…」 「何言ってんの。認知されてなんぼの仕事だから。むしろ知ってあげて」 ね?と首を傾げるルリさんに、曖昧に頷けば、穏やかな笑顔が帰ってきた。 「清十郎は自分のドラマ録画したりしないけど、うちのテレビには録画してあるから、今度持ってくるね。今放送中の探偵ドラマとか結構面白いよ〜」 「……楽しみです」 「ふふ。家に篭りっぱなしで暇でしょ?たくさん持ってくるからね。あ、てか清十郎の家のテレビでも録画にしよーっと」 「えっと、勝手にいいんでしょうか」 「いいのいいの。オレ、あいつのものはオレのものだって思ってるからさ」 にっこり笑うルリさんに思わず釣られて笑ってしまう。 実は言われた通り暇を持て余してたし、ドラマとか見たことないから、楽しみだな。 いつも学校の友達の会話は蚊帳の外で、楽しそうな声に、思わず聞き耳を立ててはどんな物語なのか想像をするだけだった。 「さ。早く早く携帯の契約終わらせて、清十郎迎えに行こう。 スケジュール的に昼休憩の中抜けでお昼ご飯一緒にとれると思うんだよね」 自然と手を握って引いてくるルリさんに思わずビクッと反応してしまったけれど、ルリさんは気付いてないのか、気づかなかったフリをしてくれてるのかそのまま店内に進んだ。

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