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「……では、初期不良などないことご確認いただけましたので、以上で完了になります。ご登録ありがとうございます」 「はーい」 僕が横でぼーっとしてる間に、ルリさんはサクサクと機種もプランも決めてしまい、平日の昼間ということもあって待ち時間もなくあっという間に完了してしまった。 チラッと見えた毎月の支払いはやっぱり決して安いものじゃなかったし、機種の一括購入も二桁するもので見た時は心臓が飛び出すかと思った。 スマホって想像よりずっと高いんだな。 僕別に電話する相手もいないし、一年しか使わないのに本当にいいのかなぁ。 なんだか胃がキリキリ痛むくらい申し訳ない。 紙袋にテキパキと入れ物の箱を片付けると、スタッフさんはにっこりと微笑んで、テーブルに何かを並べ始めた。 「今、新規ご登録いただいたお客様にはキーホルダーのプレゼントしてまして、よろしければお選びください」 「ふは!わぁ、嬉しいです〜」 今ルリさん吹き出したよね? 並べられたキーホルダーを面白そうに笑いながらルリさんが「瑞稀くん、瑞稀くん」と僕の腕を抱き寄せる。 そこには5種類くらいの人形キーホルダーが並べてあって女の子や男の子、それから猫がモチーフになっていた。 「瑞稀くん選んでいいよー。どれがいいー?」 「いえ、ルリさんがいただいてください」 「ダメ。これは瑞稀くんのスマホにつけるの。面白いから。ほら、早く選んでー」 どうしよう。 早くって言われても、選べない。 ていうか、面白いからって何? 慌てて、1番に目が止まった紅茶のように赤みがかった髪と、蜂蜜色の瞳をした人形を手に取った。 「こ、これとかどうでしょう?」 「あはは!うんうん。オレもそれがいいと思う。すみません。キーホルダーが付けれるスマホカバーと、画面の保護フィルムまでお願いします」 「かしこまりました。種類がございますのでご案内します」 ルリさんはおかしそうにくすくす笑いながら、僕の髪をくしゃくしゃ撫でる。 何がそんなに面白いんだろう。 釈然としないままスマホケースが並んでるコーナーに案内されて、機種によってケースの形が違うらしくこの中から選んでくださいと言われる。 でもそこにはあまりにも沢山のケースが並んでいて目が回ってしまうようだった。 「えっと…」 「キーホルダー付けれるケースはこれとこれと…あとこれくらいじゃない?どれがいい?」 テキパキとルリさんが沢山あるケースの中から3種類の位に絞ってくれて、ホッと胸を撫で下ろした。 チラッと値段を確認するとやっぱりどれも高くて、ケースなんていらないんじゃないかって思うけど、ルリさんは納得しないだろうし、1番安いものを指さした。 「これでお願いしてもいいですか?」 「だめ♪今、値段見て決めたでしょー。オレが決めるねー。このピンクのやつにしよう。可愛いし〜」 「もう、ルリさん〜」 「はーい。ルリさんです」 頑張って選んだのに即答されたし、見破られた。 しかも、色にこだわりはないけど、それ1番高いやつだし、絶対わざとだ。 「フィルムも頑丈じゃなきゃ意味ないし1番高いやつにしようね」 るんるんと楽しそうにフィルムも選んで振り返るルリさんは天使のような笑顔なのに、僕が困ってることをどこか楽しそうに見える。 でも、それが少しむず痒かったりするから不思議。 どうして、この人の意地悪はクラスの人にされたような悲しい感情が湧いてこないんだろう。 多分、僕のことが嫌いでやってるわけじゃないってなんとなく伝わるから…とか、自惚れてもいいのかなぁ。 じっと見つめてしまったからか、ルリさんがにこっと首を傾げる。 「? なぁに?フィルム、自分で選んでみる?」 「あ、いえ、なんでもないです…」 「そう?じゃあ、支払い済ませてくるね〜」 見ていたことが気付かれた恥ずかしさから思わずパッと顔を逸らすと、またデカデカと貼られた四季さんのポスターと目が合った。 今度のポスターはお店の入り口のガラスに貼られていたものとは違って四季さん以外に何人かで映っていた。 四季さんと、女の人と、男の子と女の子とそれから猫。 …………て、あれ。 なんか既視感。 まって、僕さっき何選んだ?

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