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「お待たせー。……あ、もしかして気付いちゃった?」
戻ってきたルリさんは僕が見ているポスターを見上げて、へにゃって笑う。
絶対わざとだこの人。
だからあの時笑ってたんだ。
「これ四季さんがモチーフだったんですね。似てると思ったんです」
「あれれれ。意外な反応。もっとこう、もールリさん!これじゃあ僕が四季さんのこと好きみたいじゃないですか〜!ぷんぷん!ってすると思ったのに」
なに今の。僕の真似?
頬を膨らませて怒る真似をするルリさんは、ただただ可愛らしいだけだ。
その演技力に思わず笑いが溢れてしまった。
「四季さんって教えてもらっていたら、なおさらこれ選びます」
猫のキーホルダーは可愛いけど、お世話になってる人と他人のモチーフのキーホルダーなら普通にお世話になってる人のものを選ぶ。
「きみはびっくりするくらい純真だねぇ。オレが瑞稀くんの立場なら清十郎のこともオレのことも嫌いになると思うけど」
「嫌いなんて!」
切なそうに笑いながら僕の髪を撫でるルリさんの言葉に、つい手を掴んでしまった。
あかぎれだらけのガサガサの手で掴んでしまったことが、たらまらなく恥ずかしくて慌てて手を引っ込めようとすると、するりとルリさんが真っ白で綺麗な指を絡めてきた。
「ひゃっ」
「ふふ。知ってる。嫌いじゃないよね。オレも大好きだよ瑞稀くんのこと」
透き通ったエメラルドの瞳が僕を映して柔らかく微笑む。
その言葉に、胸がズキッと痛んで目頭が熱くなった。
「行こっか。清十郎も待ってる」
何か言いたいのに、喉の奥がズキズキ痛んで言葉が出ない。
俯いてしまった僕に何も言わずにルリさんは明るい笑顔のまま手を引いて歩いてくれた。
大好きだなんて、そんなの気を遣って言ってくれただけだ。
そんなこと、分かってるのに。
目が合えば嫌そうに顔を顰められて、口を開けば罵られてきた。
生まれてこなきゃよかったとか、いるだけで不快だとか、そんな言葉じゃもう傷付くこともなかったのに、初めて言われたその言葉は何故だか胸に温かい痛みを残した。
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