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四季さんの家に着くと、早速ルリさんがDVDをセットして、ハンバーガーと飲み物を僕に手渡すと、ソファに並んで座った。 そして傍にはなぜか箱ティッシュ。 「これ一話目からめっっっちゃ泣けるからこの家のティッシュ根絶やしにしても気にしないで行こうね」 いや僕は気にします。 しかもこれめちゃくちゃ高いやつですよね。 「はい、食べながら見よう」 アラカルトのポテトを一つ指で掴んで口元に持ってこられ、ちょっとドキッとしながらそれを口に入れた。 ルリさんは全く気にしてないようで、指についた塩をぺろっと赤い舌で舐めながら再生ボタンを押した。 物語は探偵の四季さんが犯人を追い詰めるところからいきなりスタートした。 ドラマなんて初めて見るからワクワクする。 事件は簡単に解決して、助手の女の人にもてはやされて調子乗ってスキップしてコケて、オープニングが始まった。 四季さんの演じる主人公は明るくて、少しひょうきんもの。 顔は四季さんなのに、普段の無表情さからは想像できないほどキャラが違くて、四季さんだと言うことを忘れてしまうほどだった。 だから常にギャグが挟まれてて助手の女の子との掛け合いについ笑ってしまう。 「トモコ…」 なのにチラッと見たルリさんはすでに助手の女の子の名前を呼びながらボロボロ泣きながらティッシュで口元を押さえている。 泣けるシーンなんてあったかなぁ。 今のところ面白いだけだけど。 CMがカットされてるから物語はどんどん進んで、ついに今回の一話のメインであろう犯人をが浮かび上がった。 四季さん演じる探偵が足止めを食らっているうちに、挟み撃ちの予定だった助手の子だけで犯人とはち会ってしまう。 シーンが変わって、四季さんがやっと追いついた暗い路地裏では、雨の中助手の女の子が胸から血を流して倒れていた。 四季さんの悲痛な叫び声をあげて助手の子の体を何度も揺らす。 その姿があまりにも悲しくて、僕も目頭が熱くなった。 四季さんの泣いてる姿共にエンディングと下にエンドロールが流れ始めて一話は悲しい終わり方をしてしまった。 「トモコぉ……っ」 ルリさんは、もうしゃくり上げながら泣いて、過呼吸でも起こすんじゃないかってほどだった。 ルリさんがあんまりにも号泣するから、気になって泣けなかったけど、そっか、ルリさんこの子が死ぬってわかってたから最初から泣いてたんだ。 「大丈夫ですか?」 「しんどい……生きてよトモコぉ」 「何か目を冷やすもの持ってきます」 「いいの!ありがとう!2話も、めっちゃ感動するから見て!」 立ち上がろうとした僕をルリさんがガシッと掴んで止める。 そして2話が始まった。 あんなにも悲しい1話だったのに、中盤からは少し間抜けだけど兄貴肌の刑事が出てきて、その掛け合いの面白さに笑えしてしまう。 それなのに、またルリさんがシクシク泣き出してしまった。 …….この刑事、死ぬんだな。 そう思うと、この刑事のシーンを少しだけ冷めた目で見てしまう。 けれど2話は親友2人の友情がテーマの感動する最後で死ぬことはなかった。 なんだトモコの死で尾を引いてるだけか。 ホッとして進めてると、3話4話と盛り上がり5話のクライマックス、刑事が死んだ。 「やっぱり……」 気を抜いてしまっただけにダメージが大きくて、ついうなだれてそう言うと、ルリさんがガバッとこっちを向いた。 「え!?このラスト想像できた!?衝撃じゃない!?」 ネタバレしてるのあなたですよ…。 なんてこと、勿論言えない。 うう、すごく面白いし夢中になれるのにルリさんが気になってしまう。 ほら、また四季さんがいい雰囲気になった女の人が出てきたら、急にお大仏様みたいな表情し始めたし。 どうゆう感情でこの子見てるの? 泣かないってことは、死にはしないよね。 この人が悪い人だったりするのかな。 「やっぱり……!!」 「え!?この子が裏切り者って衝撃の事実じゃない!?なんでわかったの?IQ5億くらいあるんじゃない?」 「ルリさんが顔で全部言ってます」 「えー?オレ感情が顔に出ないことで有名よ?」 普段はね。 なんで今発揮してくれないのかなぁ。 でも、そんなことを踏まえてもやっぱりこのドラマは面白くて、時間はあっという間に過ぎていった。 「じゃあオレ、仕事に戻るね。清十郎もあと雑誌の撮影だけだし3時間くらいしたら戻れるから、他のドラマとかも見てみてね」 「はい。今日はありがとうございました」 「うん。何かあったら電話してね。オレは基本いつでも取れるから」 泣き過ぎて目の赤いルリさんを見送って、僕もリビングに戻った。 ルリさんがいなくなったら、途端に部屋が静か過ぎて寂しくなってきたけど見ていたドラマの続きを再生すると少し紛れる気がした。

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