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瑞稀くんが準備した料理は、野菜をたくさん作った純和風の5品だった。
メインのお魚の煮付けも、シソの入っただし巻き卵も、茄子の酢の物も、オクラのお浸しや大根のお味噌汁もどれも一つ一つが丁寧で優しい味付けがされていて驚くほど美味しい。
料亭の息子って言われても納得する味だった。
「瑞稀くんすっごい美味しい。料理の天才だよ」
「いや、あの、そんな……ルリさん褒めすぎです」
「本当だって。ね、清十郎」
「うん。お店開けるんじゃない?」
褒められ慣れてないからか、オレと清十郎の言葉に瑞稀くんが目に涙を溜めて俯いてしまう。
本当はこの子も泣き虫なんだろうな。
我慢強いだから、溢すことはいつもギリギリで耐えてるけど。
「オレ、和食作るの苦手だから今朝のスープと一緒に今度作り方教えてよ」
「……いつでも、喜んで教えます」
瑞稀くんのお箸を持つ手をぎゅっと握る。
その手は痛々しいほどアカギレだらけで、まだ15なのに水仕事ばかりさせられてたのかなとか、お箸の持ち方も子供が握ってるようで、教えてもらえなかったのかなとか色々考えてしまう。
でもきっと、触れられたくないことだろうから、触れない。
実はハンドクリームをプレゼントしようと思って、ちょっと高めのいいやつ買っておいたんだけど、これ渡すと手に気付いてますよって意味にとられて瑞稀くんの自尊心傷付けちゃうかもしれないよなぁ。
どうやって渡そう。
この家で生活してると時期に良くなるだろうけど、まだまだ寒い日は続いてるし、治るまで相当痛いよね。
ご飯を食べ終わると、瑞稀くんが当然というように皿洗いを始めようとするから、それは止めた。
食洗機があるとは言え、その手で皿を流すのは痛いでしょうに。
「ご飯作ってもらったし、洗い物はオレがするものなの」
「だ、だめです!ルリさんの綺麗な手で洗い物なんかしちゃ、もったいないです」
「いやオレ家でガンガンやってるっての。あ、うそ。ほとんど食洗機様がやってくれてるや」
「とにかく僕にさせてください」
「じゃあじゃんけんしよ?勝った方が洗い物係ね」
「え?あ、じゃんけん?」
「いくよー。出さんが負けよー最初はパー!!はい、オレの勝ち。どいて」
「ルリさん!ずるい!」
「Hey Japanese。負け犬の遠吠えって言葉知ってる〜?君の国の言葉だぜ」
うー、と困ったような顔をする瑞稀くんの鼻をチョンチョンと突くと、それを見ていた清十郎がくすくすと笑う。
「瑞稀、そいつの意地の悪さは折り紙付きだからお前じゃ敵わないよ。こっちおいで」
「でも…申し訳ないです…」
それでもまだ動けないでいる瑞稀くんに、つい苦笑が溢れてしまった。
「それならデザート食べるための紅茶淹れてよ。オレ、ミルクティーね」
「あ、はいっ」
仕事を頼んで、ホッとした顔をするなんて、悲しい性だなぁ。
洗い物を終わって顔をあげると、もうテーブルには飲み物もスイーツも準備されていて瑞稀くんは好きなテレビ見ていいよって言われたからかドラマをいそいそと準備してるところだった。
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