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side 清十郎 この家のドアを開ける時、柄にもなく緊張した。 俺が瑞稀にしたことはエゴでしかないし、脅すような形で無理やり家に住まわせてるくせに、今回のことでさらに俺の事が嫌になっただろうと思うと、足が重くなる。 ていうか、あの状況で別れ際俺なんかによく謝れるよな。 あの子は、怒ることを知らないのか。 あの胸糞悪い画像を思い出すと、胸がチリッと痛む。 あれだけのことをされて、怒ることもできずに、ひとりで泣いて耐えてたのだと思うと、放っておいてやることはできなかった。 だから、嫌われたって構わないと思っていたはずなのに。 「四季さん、この飛び蹴りのシーンって実際に本人がされてるんですか?」 ドラマを見ながら、キラキラした目を向ける瑞稀に、初めてそんな顔を見れたことが嬉しい反面、怖かったことや悲しかった感情をすぐ忘れて置き去りにする癖のようなものが感じられてどうにも複雑だ。 「うん。でもこれ実際には当たってないよ。それ貸して」 話しながら、プリンの蓋が開かずに四苦八苦してる手元からプリンを抜き取ると、開けてから手渡す。 開かないって言えよ。 「あ、すみません。ありがとうございます」 「ん。たまに開きづらいよな」 たったこれだけで申し訳なさそうにする瑞稀の髪をわしゃわしゃ撫でる。 「いただきます」 「はいどうぞ」 律儀に手を合わせて、プリンをスプーンですくうと小さな口にぱくっと運ぶ。 その瞬間、瑞稀の顔がぱっと明るくなった。 ルリも瑞稀の隣でその様子を頬杖をついて愛おしそうに微笑んで見ていた。 「四季さん、とっても美味しいです」 「口にあってよかったね」 「はい!口の中が幸せ…」 明日から毎日買ってこよう。 ふにゃっと笑う柔らかい笑顔にまたつい手が伸びて髪を撫でてしまう。 「ごめん、電話だ」 ルリがスマホの画面を見て、嬉しそうに笑ったから、相手はあの人かな。 「食べれるなら冷蔵庫にある他のお菓子もいくらでも食べてね」 「贅沢すぎます…」 「いいのいいの」 プリン一口で幸せになれる瑞稀が安上がりすぎなんだよ。 「うちの人帰って来たみたいだから、オレも帰るね。気が付けば遅くまで居座っちゃってごめんね」 廊下に出たルリが戻って来て、すぐ帰る支度を始めた。 またティーカップをどっちが洗うとか洗わないとか瑞稀と言い合ってる。 よく2人とも飽きないよな。 「じゃあもうじゃんけんねー。はい、出さんが負けよー最初は…」 「ちょき!!」 待ってましたと言わんばかりに気合の入ったチョキを出した瑞稀と、でしょうねと言うように余裕の笑みでグーを出すルリ。 さっきので、チョキを出してくること俺でも読めたよ。 「あれあれあれ〜?最初はグーでしょ。瑞稀くんずるーい。はいどいて」 「ルリさんの方がずるいです〜」 「はは。ルリさん天才だよね。よく言われる」 いや言ってない。 軽く流して食洗機にかけるだけなのに、多分ルリは瑞稀の自分がやって当然の下僕精神直したいのかって思ったけど、あの楽しそうな笑顔はやっぱり少し意地悪入ってると思う。 自分より一回り以上年下の子供いじって遊ぶなっての。 チャチャっと手早くカップを洗うと、そのままさっさと挨拶をしてルリは帰って行った。 「ルリさん、僕でちょっと遊んでますよね?」 「瑞稀が可愛いんでしょ」 顔を少し赤くして照れる瑞稀の姿に、ルリに対して少し妬けてしまうけど、昨日のような気まずさはもうなかった。

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