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第15話
目が覚めたとき、奈津は海未の細腕の中にいた。至近距離で見る海未は、相変わらずきれいな顔をしていた。口が少し開いているところが可愛い。キスをしたくなるけれど、したら海未は「寝てたのに」と怒るかもしれない。
「海未くん、ごめんね」
一応断って、奈津の肩に回されていた腕を解いた。枕元のスマートフォンを手にとる。七時十三分。今日は一限から講義があるから、起きなければ。
海未まで起こす必要はないので、タオルケットをかけ直して、そっと身を離した。
キッチンに立って、グリルに食パンを二枚入れて、フライパンに卵を二個割って落とした。このアパートは古いけれど、コンロが二口あるのはよかった。もう片方のコンロでインスタントコーヒー用の湯を沸かす。
不揃いの皿にやっぱり少し焦げついたトーストを載せて、その上に半熟の目玉焼きを崩さないように載せる。
空いたフライパンでソーセージを炒めて、レンジで冷凍ブロッコリーを温める。空いた手でトマトを六分割にした。それらを皿の隙間に押し込む。
やっぱり不揃いのマグカップにインスタントコーヒーを淹れていると、海未が目覚めたらしい。
「奈津さん?」
背後から、寝起きの掠れた声で呼ばれた。
「海未くん、おはよ」
「おはよ」
まだ眠そうだ。本当は寝てていいよ、と言いたいところだけれど、そうすると奈津が部屋を出たら鍵はどうすればいいのだ。海未もいつまで奈津の元にいるのかわからない。
「もうちょっとでごはんできるから、待ってて」
そう言うと、海未は頷いた。
小さなテーブルに、ふたり分のインスタントコーヒーと、隅の焦げたトーストに載せた目玉焼きと、その皿の縁に無理矢理載せたトマトとソーセージが今日の朝食だった。「いただきます」
海未が両手を合わせて、言う。なんとなく奈津もそれに倣った。海未は相変わらず美味しそうに食べる。
「トーストに卵載せる奈津さんのセンス、好き」とまで言われた。
「それは、皿が足りないからなんだけど」
そんなに喜ばれてしまうと、恥じ入ってしまう。「そんなのいーの」と返され、海未はご満悦だった。左手で持ったフォークでカットしたトマトを刺すと、それを口に運ぶ。けれど一口で収めるには大き過ぎたらしく、半分のところで海未は噛み切った。
「ほら、汁、飛んでる」
自然と奈津の手が伸びて、海未の頬を拭う。そうすると海未は、へら、と笑った。
「こういうの、付き合ってるみたいだね」
無邪気な海未の言葉に、奈津はそれならどんなにいいか、と思う。
「僕は、」
海未くんの彼氏になれるのかな。
「奈津さんが期間限定彼氏でよかった」
奈津は言葉を飲み込んで、海未の言葉にほんの少し傷付く。
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明日は、午前1時半頃、午後12時半頃、午後17時頃更新します。
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