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第166話 見えない糸18

「瑞希くん。それはちょっと……賛成できないよ」 智也は、運転しながらチラチラと瑞希の表情を確認した。瑞希は妙に吹っ切れた表情をしている。 「うん。反対されるの、分かってる」 「気持ちは分かるけど、亨くんが君にしたことは、ひとつ間違えば……」 「うん。僕、死んでたかもしれないよね」 智也が濁した言葉を、瑞希はきっぱりと言い切って 「でもあれは、僕も悪かったんだ。僕が亨くんに安心させてあげなかったから。信じさせてあげられなかったから。だから亨くんは」 「だとしてもだ。そういう危険な考えになってしまうのは、亨くんの性格だよね? 今回は上手く話し合えても、また同じ状況になるかもしれない。君が助かったのはほとんど偶然だろう? もしまた」 瑞希は自分の両手をぎゅーっと握り締めて、激しく首を横に振った。 「違うんだ。そうじゃない。あれは……僕がそうしてって、言ったの。亨くんが悪いんじゃないんだ」 「え?」 智也は危うく信号を見落としそうになって、ブレーキを踏んだ。車が嫌な音をたてて、ラインぎりぎりで止まる。 智也は、はあっとため息をつくと、ハンドルを離して瑞希の方に向き直った。 「それは……どういうことだい? 君と無理心中みたいなことしようとしたのは、亨くんの方だろう?」 瑞希はちらっとこちらを見て目を伏せた。 「……僕が……亨くんを煽ったの。そんなに好きなら一緒に死ねるか?って」 「……っ」 智也は息をのんで、言葉を失った。 「売り言葉に買い言葉、だったんだと思う。亨くん、僕が裏切ったって思い込んでたから……すごく落ち込んでて……」 もしそれが本当ならば、瑞希から聞いていた話はだいぶ意味合いが違ってくる。 「でもっ、亨くん、僕を本当に殺そうなんて、きっと思ってなかった。首を締めてる手……すごい震えてたから。僕、僕は、こ、怖くなって、逃げ出したんだ。ちゃんと、冷静に話し合うべきだったのに、ぼ、僕は」 相手は瑞希よりかなりガタイのいい大学生だと聞いている。もしそんな状況になったら、まだ高校生の瑞希が、恐怖で怯えてしまっても不思議はない。 だが……その状況が本当ならば、亨という青年はどれほど苦しかっただろう。もしかしたら今も、罪の意識に苦しみ続けているかもしれない。 「瑞希くん。お母さんには、首を絞められたとは言わなかったんだよね? ただ、彼のアパートに連れて行かれて、連絡なしでずっと泊まっていたって言っただけだよね?」 「……ぅん……」 瑞希は泣いていた。俯いている彼の握り締めた手に、ぽたぽたと透明な雫がいくつも落ちていく。 「君はまだ、俺にキチンと話してくれてないね?瑞希くん。亨くんと君のことを。それじゃあ俺は、君を助けてあげられないよ」

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