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第181話 濡れて艷めく秋の日に8
途端に祥悟はくくく…と楽しげに笑って
「露出多いって聞いたけど?ひょっとしたら裸かもな」
「ええっ?」
思わず大きな声を出してしまって、智也は慌てて自分の口を押さえると、そっと周りの様子を窺った。ちらちらとこちらを気にする他の客の視線に、目を伏せて小声で囁く。
「お、驚かさないで、祥」
祥悟はくすくす笑いながら
「ま、流石に真っ裸ってことはないだろうけどさ。あのブランド、前にもちょっと過激なCMで話題になってたじゃん?俺、そういうのって結構好き」
……君は、そうかもしれないけど……。
祥悟と、素肌で絡む撮影。
想像しただけで……
智也は思わず、自分の額を手で押さえた。
……いや。無理だ……。素肌どころか服着てたって、祥悟と一緒に撮影なんて……
引き受けたのは失敗だったかもしれない。
やっぱり自分には、荷が重い。
「ね、祥。その撮影だけどね、」
「実はおまえの他にさ、もう1人候補いたんだよね」
「え?」
祥悟はにやりと口の端を歪めて
「凪義って俳優、いるだろ?あのドラマに出てた、やたらデカいやつ」
「あ……ああ」
「社長からさ、あいつと智也、どちらがいいかって打診されたんだよね」
祥悟の言葉に、こめかみがピクっとひくついてしまった。
……凪義。……あいつと?
ドラマでは端役同士で、直接絡むシーンはなかったが、その俳優ならよく知っている。
間接的にだが。
「あの男と……俺が?」
妙にしゃがれた声が出て、智也は慌てて水のグラスに手を伸ばした。
「そ。最近あいつ、よく一緒になるんだよね、俺と」
……知ってる。
智也はゴクゴクと水を飲んだ。
「で、社長に聞かれたのな。どちらの方が今回の企画に合ってるかってさ」
グラスをテーブルに置いて、智也は祥悟の唇を見つめた。
祥悟はふんっと鼻を鳴らすと
「比べるまでもねーじゃん?おまえで即答」
「どうして?だって彼の方が……」
……今、人気急上昇で、見た目も俺より派手で
「あんな派手な面だけが取り柄の男、選ぶわけねーし。あいつさ、マッチョな身体売りにしてるくせに、ほんとは締りのねえ身体なんだぜ?肌も汚ねえし」
「え。そうなのかい?」
祥悟は顔を顰めて
「そ。智也の方が断然綺麗だし」
智也は目をあげて祥悟の目を見つめ、瞬きをした。
智也の方が断然綺麗。
その言葉にドキドキしながらも、別のことが気になる。ひと月ほど前に聞いてしまった噂だと……。
「どうして……知ってるの?彼の身体が、その、」
「あいつのとこ、何回か泊まったし?」
あっさりと言い放った祥悟の一言に、一瞬、心臓が止まった。……気がした。
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