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第186話 濡れて艷めく秋の日に13

祥悟は腕に抱き込んだクッションをぽふぽふもてあそびながら、ぼそっと呟いた。 「なんか……あったのかよ?つか、怒ってた?おまえ、俺にさ」 「祥、ちが」 祥悟はよっと小さく声をあげてソファーから身を起こし、クッションをむぎゅーっと押し潰すと 「なに気に入らなかったのか、言えよ。黙って避けられるとか、すっげーやだ。俺さ、おまえが嫌っつーこと、なんかした?」 「祥……」 上目遣いに睨んでくる祥悟は、さっきの冷めきったような瞳ではなく、不貞腐れた子どものような色を滲ませている。 智也はふぅ…っとため息をついて肩の力を抜いた。 「違うよ。君のこと、気に入らないとか怒ってるとか、そんなことは全然ないんだ。ちょっと…いろいろあって心が疲れていたのかも」 「そのいろいろって、何さ」 智也は立ち上がり向かい側に行くと、祥悟が抱き込んでいるクッションの端を掴んで引っ張った。 祥悟は腕をゆるめ、まだ拗ねたような顔でこちらを見上げ、素直にクッションから手を離す。 智也はそれを掴んで腕に抱え込みながら、祥悟の隣に腰をおろした。 会う決心もつかぬまま、祥悟の奇襲を受けて動揺していたが、ようやく気持ちが落ち着いてきた。 これまで1人で空回りしてきたことを、祥悟にきちんと話したい。 祥悟の言う通りなのだ。 自分の態度は、あまりにも一方的で身勝手すぎた。 智也はクッションをぎゅっと掴みしめ、心を決めた。 「前に話したこと、あったよね。俺が片想い、してるって」 「……うん、聞いたな」 「煮詰まってたんだ。伝えられない気持ちが、ずっと心の中で空回りしていて、自分でもどうしていいのか……わからなくなっていた」 「まだ、そいつに告ってねえのかよ?」 「うん」 「そっか……」 ちらっと目をやると、祥悟は神妙な顔つきをしていた。伏せた目を縁取る長い睫毛が小刻みに震えている。相変わらず、どこもかしかも泣きたくなるほど綺麗な人だ。 「それに、自分の今後のこととかね、いろいろ考えてた」 祥悟が顔をあげ、こちらを覗き込んでくる。 「おまえ、辞めんの?この仕事」 「まだ、決めてない。でも揺れている、かな」 「面白くねえの?」 「そうじゃないよ。仕事自体は楽しいしやり甲斐もある。でも、自分の適性がね」 祥悟はじーっとこちらを見ている。智也がちらっと目をやり苦笑すると、ぷぅっと頬をふくらませて 「智也はさ、お人好しなんだよ。おまえ最近、橘のおっさんにいいように使われてんだろ?新人の面倒とかさ、押し付けられてんじゃん」

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