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第194話 濡れて艷めく秋の日に21

「要するにさ、男らしくないってことだろ?そんなの全っ然、褒め言葉じゃねーし」 ぷぅっと頬をふくらませ、不平たらたら愚痴る祥悟に、智也は必死にポーカーフェイスを装って微笑んだ。 「男らしくないってことはないよ。君は骨格が華奢だからね、ガタイがいいとはたしかに言えないけど」 祥悟は垂れてくる前髪をかきあげて、ツカツカとこちらに歩み寄ってきた。 ……うわ。ちょっと、… あまり無防備に近寄らないで欲しい。 つい、後ずさりかけた智也に、祥悟は腰に手をあててふんぞり返ってみせ 「俺やっぱ、おまえみたいな身体がよかったな」 祥悟の視線がゆっくりとこちらの全身を眺め回す。これはいったい何の拷問だろう。 手が伸びてきて、細い指先がつーっと胸の下辺りに触れた。 「…っ」 「いいよなぁ。細身だけどすげえ綺麗に筋肉ついてるしさ。肩幅もがっしりしてるし」 その指先は尚も、筋肉の形をなぞるように、肌の上を気紛れに戯れていく。 「こら、祥。ちょっと、くすぐったい」 堪らず抗議の声をあげると、祥悟はちょっと驚いたように指を引っ込めて 「あ。わりぃ。つーかおまえ、風呂入んのになんで下着脱いで来ねえのさ?」 「え?あ、いや」 祥悟は下からすくい上げるように顔を近づけてきて 「ふーん?見られんのやなんだ?俺に」 「別に、そうじゃない。脱ぐのを忘れてた、だけで」 祥悟の手が下腹に伸びてくる。トランクスを掴まれそうになって、智也は慌てて腰を引いた。 「あっ、こら」 「早く脱いじゃえよ。風呂の湯、そろそろ溢れちゃうけど?」 その言葉に、ハッとして浴槽に目を向ける。 祥悟とのやり取りに必死になっていて、すっかり忘れていた。 その一瞬の隙をついて、祥悟の手が伸びてきて、またトランクスのウェストに指を引っ掛けようとする。智也はすかさずその手を掴んで 「ダメだよ、祥。自分で脱ぐから。君はシャンプーを流しておいで」 「ちぇっ……」 祥悟は残念そうに舌打ちすると、こちらの手を振りほどき、シャワーの方に戻って行った。 ……まったく……油断も隙もないんだから。 智也はため息をつくと、浴槽のお湯の蛇口を止めてから、自分の下半身を見下ろした。 もちろん、脱ぐのを忘れていたわけじゃない。 脱ぎたくない。 祥悟にソコを見られるのが恥ずかしいだけじゃない。この薄い布1枚が、自分の理性を保つ為の、最後の砦なのだ。 ……もう……本当にどうしよう。

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