196 / 349
第196話 濡れて艷めく秋の日に23
顔をあげてみると、窓の外を見つめたままの祥悟の横顔が目に入った。
「うん…まあ、それなりに、ね」
曖昧に返事を濁す。祥悟は夢から覚めたような顔で、ゆっくりとこちらを見下ろして
「ふーん。やっぱ、おまえもおんなじかよ。俺さ、荒れてたって言ったじゃん?なんか最近満たされなくってさ、他の女抱いても。だから相手、女じゃない方がいいのかも?って思ったんだよね」
「……え?」
智也が驚いて目を見張ると、祥悟はバツが悪そうに目を逸らした。
「や。だってさ、相手が女だからあいつとダブってしんどいのかも?って思ったんだ」
「祥、君……それって…」
「だからさ。そっち系のが集まる店に行ってみたんだ。ナンパしにさ」
……ちょ、っと、なに、それ
祥悟の投げてよこした次の爆弾発言に、智也は息を飲んだ。
「どっ、どうして、そんな、」
「俺、女しか経験ないけどな。可愛い男の子だったら抱けるかも?って物色してたらさ、なんでか知らねえけど、ガタイのいい男たちに囲まれてさ。逆にナンパされまくっちまったの」
……あ……当たり前だからっ
祥悟はあくまで自分が男役のつもりだろうが、その見てくれでそんな場所をうろうろしたら、群がってくるのは絶対に……
「そ、それで、どうしたの?」
思わず声が上擦った。祥悟はひょいっと首を竦めて
「別に?どうもしねえし」
「そうか。じゃあ、諦めて帰ってきたんだね?」
智也がほっと胸を撫で下ろすと、祥悟はうーっと小さく唸ってから
「んー……。とりあえず一番好みのヤツとホテルに行ってみた」
「……っ?…えええっ?」
思わず叫んで湯船から立ちあがっていた。
……な、何やってるのっ、祥!
信じられない。
女じゃダメだから男で?そんな……そんな馬鹿な!
智也の剣幕に、祥悟は驚いて目を丸くして
「な、なに喚いてんのさ?つーか、おまえ、ちんこ丸見えだけど?」
「そんなこと、どうでもいいよ!祥、ホテルに行ったの?男と?」
「んー。一応ね」
「寝たの?そいつと」
祥悟が呆気に取られているのは分かってる。
でも、詰問せずにはいられなかった。
ナンパされてホテルへ。
その相手は、きっとネコじゃない、タチだ。
ということは……祥悟は、男に抱かれたのか。
自分以外の、男に。
ともだちにシェアしよう!