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第199話 濡れて艷めく秋の日に26※
祥悟は探るような目でこちらを見つめている。
……ああ。また余計なことを言ってるよな、俺は
「冗談だよ」と誤魔化す為に開きかけた口に、祥悟の人差し指が伸びてきて、すっと押し当てられた。
「ふーん。智也、男、抱けるんだ?だったらおまえに言えばよかったよね」
「…っ」
見開く智也の目に、艶めいた祥悟の瞳が近づいてくる。肩を掴まれ、直に触れている互いの下半身が、お湯の中で軽く擦れた。
「じゃあさ、俺のこと抱いて?智也。気持ち良くしてよ」
「…あ……」
祥悟の小さな尻が膝の上で揺れる。その動きにつられて、風呂の湯が揺らめき、ちゃぷんちゃぷんと音を立てた。
「おまえのキスが気持ちいいのは、もう知ってる。だから抱いてよ。少しぐらい荒っぽくても構わないし。いろんなこと忘れられるくらい……気持ちよくしてくれる?」
「…し、祥……」
吐息混じりの祥悟の囁きが、浴室に反響した。
その声に包まれて、蠱惑的に揺らめく瞳に捕えられて、まるで金縛りに遭ったみたいに身動きが出来ない。
必死に絞り出した声は、しゃがれて掠れていた。喉が、カラカラだ。
祥悟が早く答えろと言わんばかりに、焦れたようにくいくいっと腰を押し付けてくる。
互いにタオルも巻いていない剥き出しのそこが、お湯の中で擦れ合う。
今、自分の下腹に当たっているのは……さっき見てしまった祥悟のペニスだ。
煽られて勃ちあがりかけた自分のそこを、まるで揶揄うようにつんつんと掠めてくる。
「…っ、……っ」
ダメだ。抑えが効かない。
こんな直接的に煽られたら、もう我慢なんか出来ない。
智也は腕を伸ばし、祥悟の小さな尻をぎゅっと掴んで引き寄せた。
想像以上に滑らかな手触りだった。
無駄な肉を削ぎ落としたような祥悟の身体の、そこだけは少しだけ柔らかくて、掴み甲斐がある。
双丘を両手で掴み締め引き寄せると、互いの下腹がお湯の隔たりを失ってピッタリと密着した。
祥悟の雄が当たる。
自分のソレも、既に昂っているのがバレバレのはずだ。
見つめる祥悟の瞳が、とろりと蕩けた。
「いい、の?俺が……抱いても、平気かい?」
「ん……。いいよ。智也なら、大丈夫かも」
「でも……男を抱くのは…上手くないかもしれないよ?」
智也が尚も念を押すと、祥悟はぷふっと噴き出して
「おまえ、いちいち気にしすぎ。もう黙れって。抱く気あるなら抱いて?嫌なら無理しなくていいし?」
据え膳食わぬは男の恥。
お膳立ては整っているのだ。
ここまで言われて手を出さないのは……男じゃない。
智也は震える吐息を漏らすと、祥悟の唇を下からすくうようにして口づけた。
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