199 / 349

第199話 濡れて艷めく秋の日に26※

祥悟は探るような目でこちらを見つめている。 ……ああ。また余計なことを言ってるよな、俺は 「冗談だよ」と誤魔化す為に開きかけた口に、祥悟の人差し指が伸びてきて、すっと押し当てられた。 「ふーん。智也、男、抱けるんだ?だったらおまえに言えばよかったよね」 「…っ」 見開く智也の目に、艶めいた祥悟の瞳が近づいてくる。肩を掴まれ、直に触れている互いの下半身が、お湯の中で軽く擦れた。 「じゃあさ、俺のこと抱いて?智也。気持ち良くしてよ」 「…あ……」 祥悟の小さな尻が膝の上で揺れる。その動きにつられて、風呂の湯が揺らめき、ちゃぷんちゃぷんと音を立てた。 「おまえのキスが気持ちいいのは、もう知ってる。だから抱いてよ。少しぐらい荒っぽくても構わないし。いろんなこと忘れられるくらい……気持ちよくしてくれる?」 「…し、祥……」 吐息混じりの祥悟の囁きが、浴室に反響した。 その声に包まれて、蠱惑的に揺らめく瞳に捕えられて、まるで金縛りに遭ったみたいに身動きが出来ない。 必死に絞り出した声は、しゃがれて掠れていた。喉が、カラカラだ。 祥悟が早く答えろと言わんばかりに、焦れたようにくいくいっと腰を押し付けてくる。 互いにタオルも巻いていない剥き出しのそこが、お湯の中で擦れ合う。 今、自分の下腹に当たっているのは……さっき見てしまった祥悟のペニスだ。 煽られて勃ちあがりかけた自分のそこを、まるで揶揄うようにつんつんと掠めてくる。 「…っ、……っ」 ダメだ。抑えが効かない。 こんな直接的に煽られたら、もう我慢なんか出来ない。 智也は腕を伸ばし、祥悟の小さな尻をぎゅっと掴んで引き寄せた。 想像以上に滑らかな手触りだった。 無駄な肉を削ぎ落としたような祥悟の身体の、そこだけは少しだけ柔らかくて、掴み甲斐がある。 双丘を両手で掴み締め引き寄せると、互いの下腹がお湯の隔たりを失ってピッタリと密着した。 祥悟の雄が当たる。 自分のソレも、既に昂っているのがバレバレのはずだ。 見つめる祥悟の瞳が、とろりと蕩けた。 「いい、の?俺が……抱いても、平気かい?」 「ん……。いいよ。智也なら、大丈夫かも」 「でも……男を抱くのは…上手くないかもしれないよ?」 智也が尚も念を押すと、祥悟はぷふっと噴き出して 「おまえ、いちいち気にしすぎ。もう黙れって。抱く気あるなら抱いて?嫌なら無理しなくていいし?」 据え膳食わぬは男の恥。 お膳立ては整っているのだ。 ここまで言われて手を出さないのは……男じゃない。 智也は震える吐息を漏らすと、祥悟の唇を下からすくうようにして口づけた。

ともだちにシェアしよう!