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第206話 濡れて艷めく秋の日に33※

「っく」 「……っ」 祥悟の爪が肩に食い込む鋭い痛みが引き金になったように、急上昇した熱が一気に弾けた。 ほとんど同時に祥悟も解き放ち、声にならない声をあげて全身を硬直させる。 握り込んだ2つの欲情は熱い飛沫を吹きこぼし、溢れた蜜が混じり合って、智也の手をトロリと濡らした。 一瞬の強烈な浮遊感の後の唐突な重力の戻りに、ついていけずに脚の力がガクンっと抜けかける。 祥悟の身体も急にカクンと弛緩した。 智也はその身体を慌てて抱き寄せて、一緒にズルズルと壁伝いに降りていった。 床に尻もちをついた祥悟は、どうやら半分意識が飛んでいるらしい。智也は覆いかぶさって彼の顔にそっと頬擦りをした。 祥悟を落とさずにそっと床に着地させられてほっとした。だがそれで持てる力を使い果たしてしまったらしい。全身が重気だるくて、どこにどう力を入れていいのかよくわからない。 「…っ、祥、だい、じょうぶ…?」 はあはあと荒い息の合間に、ようやく声を絞り出した。祥悟は夢からまだ醒めないような目でぼんやりと視線を寄越して 「…っは…ぁ、だいじょ、ぶなわけ、ねーじゃん」 やはり荒い吐息混じりに微かに呟いた。 持ち上げるのも億劫な腕をのろのろとあげて、その頬にそっと手を当てる。 「ごめん」 つい反射的に謝ってしまった口に、祥悟の手が伸びてきて指先で唇をつつかれた。 「謝んな、っつの。なあ……智也?」 「なんだい?」 「すっげぇ……きもち、よかった……」 思わずこぼれ落ちたような祥悟の満足気な言葉と笑顔に、智也は息を飲んで慌てて顔を背けた。 気が緩んでいたせいか、嬉しすぎてうっかり涙が滲んだのだ。 「そ、そうか。それなら、よかった」 焦るこちらに気づかないのか、祥悟はうっとりしたように胸に顔を寄せてきて 「ん……。自分でするより…、あ、女とした時よりさ、全然すげえのな」 その喋り方はちょっと呂律がまわっていなくて、なんだかひどく可愛らしい。 智也はまた感極まって泣きそうになりながら、汚れていない方の手で、華奢な肩を抱き寄せた。 「君、ちょっと卒倒しかけたよね。クラクラするかい?」 「ん。ちょっとな。でも、だいぶマシになってきた」 祥悟が胸にもぞもぞと顔を擦り寄せてくる。その仕草がまるで甘えた仔猫みたいで、余計に愛しさが込み上げた。 自分の手の中で、のぼりつめて果ててくれたのだ。 この、つれないけれど可愛い想い人は。 夢中で触れていた彼の感触が、今更生々しくよみがえってきて、智也は自分の濡れた手の平をじっと見つめてしまった。 イった瞬間の祥悟の艶めかしくも美しい表情まで、ありありと浮かんでくる。 ……うわぁ……。

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