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第215話 秋艶7
「違う違う。誤解だよ、祥。俺は君の姉さんの胸になんか興味はないからね。純粋に仕事の話として……。祥?どうしたの?」
祥悟の目がドアの方に向いているのに気づいて問いかけると、彼はすぐにこちらに視線を戻してにやっとした。
「ムキになるなって。わかってるし」
「あ、その顔、信用してないだろう」
祥悟はますます悪戯っぽく目を輝かせ
「別にいいけど?おまえもさ、スケベ心のある普通の男だってわかって、ちょっと安心したもん」
「こら、全然わかってないよね。俺はそういうこと、言ってな」
ムキになって反論しようとした智也の唇に、祥悟が人差し指を押し当てた。
「っ?……なに?」
祥悟の目が意味ありげに、またドアの方をちらっと見る。
そのとき、ドアがノックされて、ガチャっと音をたてて開いた。
「あ、祥悟くん。休憩中悪いんだけど、ちょっと変更が入ったからこれを」
言いながら資料を手に部屋に入ってきたのは、祥悟のマネージャーの城嶋だった。気を取られた智也の顎に、手が伸びてきて頬を手のひらで包まれる。
……え……?
驚いて祥悟に視線を戻した瞬間、覆いかぶさる彼の目が近づいてきて……唇が押し当てられた。
……えっ?
しっとりと唇を押し包まれる感触。
智也は驚きに目を見開く。
祥悟にキスをされていた。
瞬間、頭の中が真っ白になる。
金縛りにあったように身体が動かない。
押し当てられた唇が動いて、薄く開いたままの唇を舌で割り開かれた。
祥悟の手が後頭部に周り、がしっと押さえつけられる。
「…んっ」
一瞬惚けた後、すぐに事態を把握した。
マネージャーの目の前で、祥悟にキスをされているのだ。しかも挨拶程度の軽いヤツじゃない。
智也は焦って、手を突っ張らせた。
横目に映る城嶋の顔が、唖然としている。
……ちょ、ちょっと、祥っ
祥悟は思いの外強い力でこちらの頭を押さえたまま、更に口づけを深くしてくる。
「あ。あー。ごめん、お邪魔だったかな。資料、ここに置いていくから目を通してね」
城嶋は口早にそう言うと、踵を返しそそくさと部屋を出て行った。
……え、ちょっと待って、城嶋さん
ドアがバタンと閉まる。途端に祥悟の手が緩んで唐突に口づけがほどかれた。
ぱちっと開いた祥悟の目が、こちらを睨みつけてからちらっとドアの方を見る。
「し、祥っ、君、何やってるのっ。城嶋さんが、見て」
声が上擦る。
祥悟が再び自分を見下ろしてくる。
その表情は、何故か得意気だ。
「何って、別に?マーキングしただけ」
「え?なんだって?なんて言ったの?今」
「何でもねえし?いちいちオタつくなって。ちょっと挨拶程度のキスしただけじゃん」
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