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第225話 秋艶17
祥悟はひどくご機嫌斜めな顔でこちらを睨みつけると、ずかずかと中に入ってきた。ちらっと足元を見て、小さく舌打ちする。
「やっぱ来てたのかよ」
「え……祥、どうして、君がここに?」
戸惑う智也を、祥悟は再びギロっと睨みつけてくる。
「来てんだろ?あのおっさん。何だよ、お楽しみの最中だったわけ?邪魔なら消えるけど?」
智也は大きく目を見開き、慌てて首を横に振った。祥悟はじろじろとこちらの全身を眺め回すと、はあっとこれみよがしなため息をついて
「まだなんもされてねえよな。でも口説かれたんだろ?だから言ったじゃん。気をつけろってさ」
「祥、どうして、その、彼がここに来てるって」
その時、リビングのドアが開いて、城嶋が顔を覗かせた。
「真名瀬くん。お客さまかい?だったら僕は」
言いながら出てきた城嶋が、声を途切らせその場に立ち止まる。
「っ?た…橘くん…」
「どーも」
祥悟はひょいっと首を竦めると、腕を組んで壁に寄りかかった。城嶋は焦ったように、祥悟と自分の顔を見比べて
「こんな時間に、どうして君が、ここに」
「それはこっちのセリフなんだけどな。マネージャー。あんたこそここで、何してんのさ?」
「あ……いや、僕は」
「要件済んでるなら帰れば?それとも何か込み入った用事でもあるわけ?」
城嶋は言葉を詰まらせて、祥悟ではなくこちらを睨みつけてきた。
そんな目をされても困る。
別に、自分が2人を呼んだ訳じゃないのだ。
「真名瀬くん。君は僕に嘘をついたのか。彼とは何もないと」
「や、嘘はついてません。俺は」
「あのさぁ。ごちゃごちゃ文句言わずにとっとと帰れば?おっさん。あんた自分の立場、わかってんのかよ?」
横から祥悟がイライラと遮ってきた。鼻じらむ城嶋に、祥悟は得上級の悪い顔をしてせせら笑いながら
「あんた、社長に気に入られて、最近調子に乗ってるみたいだけどさ、俺、他にもあんたの痛い秘密、握ってるんだよね。……倶楽部Kって知ってる?」
祥悟の一言に、城嶋の顔つきが変わった。
「…何を言っているのか、分からないな」
「あっそ。じゃ、侑生ってホストは知ってる?」
「っ……」
城嶋は息をのんで黙り込む。その顔はひどく青ざめて怖ばっていた。
智也は固唾を呑んで、2人の様子を見守った。
祥悟は全身から、ものすごい怒りのオーラを漂わせていて、うっかり口を挟む気にもなれない。
「き、君は、」
「わかったらとっとと失せな、おっさん」
ゆらりと壁から身を起こすと、手を伸ばしてきてこちらの腕を掴む。そのままグイッと引き寄せられた。
「こいつは俺の大事なカレシ、なんだよね。2度と変な真似するなよ?でないと、職失って路頭に迷うことになるぜ、あんた」
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