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第232話 秋艶21※
「っは、……はぁ、……はっ」
自分の息遣いが荒い。何度も何度もすくうようにして口づける度に、洗面台に乗り上げている祥悟の頭が、後ろの鏡にぶつかってしまう。
智也は彼の後頭部を自分の手でガードしながら、また深く唇を重ねた。
どうしてこんなに興奮しているのか、自分でもよく分からない。
さっき城嶋に言い寄られて、その動揺を引きずっているせいか?それとも祥悟が自分の為に、わざわざここに足を運んでくれたのが予想外すぎるせいなのか。
「ん、っはぁ……んむ……ぅっん」
こちらの動きに身を任せ、口づけに応える祥悟の息遣いも激しくなっていく。
上書きだけなら、もうこれで充分だ。そもそも自分は城嶋に唇を奪われてはいないのだ。
でも欲しくて堪らない。もっともっと祥悟の甘い吐息を柔らかい唇を舌を、自分だけのものにしたい。
「んっはぁ……っ、と、もや、おまえ、がっつき、すぎ」
祥悟が苦しげに口づけをほどくと、じ…っと目を見つめてきた。
「…ぁ、ごめん……」
自分を見る祥悟の眼差しが心配そうで優しくて、それだけでもう胸がいっぱいになる。
祥悟はこつんっとおでこをくっつけてきて
「謝んなくていいし。でもさ、おまえ、大丈夫?」
気遣われてるのが嬉しいけど情けなくて、智也は苦笑いしながら
「はは。なんだろうな。ちょっと……興奮してるのかも」
照れ臭くて目を逸らすと、祥悟はふーんっと鼻を鳴らし
「あと、どこ、触られた?」
「祥、もう、大丈夫だよ、服の上からだったし」
「いいから言えよ。どこさ?」
「……太腿……かな」
「ん」
祥悟の手が首から外れて、すいっと下の方に伸びる。シャツの上から腹を掠めた手が、下腹を悪戯に撫でてから太腿に辿り着いた。そんな微かな彼の手の感触にも、思わずビクッとしてしまう。
はっとして彼の顔を見ると、祥悟もちょっと目を丸くしていて
「ふふ。なんかさ、今日のおまえ、可愛いかも」
瞳を煌めかせて笑いながら、指先で太腿をさわさわと撫でる。
「か、可愛いって。…っあ、祥、ダメだよ」
指先が太腿を這い上がってきて、際どい場所を掠める。智也が焦って腰を引くと
「逃げんなって。おまえのさ、ちょっとデカくなってるじゃん」
バレてる。そう思った瞬間、顔がかーっと熱くなった。
祥悟は遠慮なしに手を伸ばしてきて、スラックスの上からソコを撫で上げた。
「……っ」
祥悟の言う通り、今日の自分は何だか変だ。
彼のちょっとした表情に、声に、動きに、前より過敏に反応してしまって、そんな自分にすごく戸惑う。
……どうしたんだよ、俺。少し落ち着けって。
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