241 / 349
第241話 秋艶30※
「え……」
祥悟の真剣な眼差しに戸惑う。
「だっておまえのここ、萎えてんじゃん」
言いながら手を伸ばしてきて、こちらの股間に触れてくる。
不意打ちに智也はびくっと腰を引いた。
祥悟は苦笑しながら
「それにずーっと仏頂面してるしさ。ほんとはやなんだろ?男の俺なんか抱くのはさ」
「ち、違う、祥、」
「無理すんなって。おまえってさ、優しすぎて、時々ムカつく」
「祥……」
違う。仏頂面なんかしていない。不安にさせないように、表情をなるべく消していただけだ。たしかにアソコは萎えてしまっているが、それは彼のアナルを傷つけたくないと集中していたからで。
「も、いいよ。ありがと、智也」
祥悟は目を逸らし、こちらの肩を押し退けて、台から降りようとする。
「違う」
智也は咄嗟にその手首を掴むと、後ろの鏡に彼の手を押さえつけた。驚いてあげたもう一方の手も掴んで鏡面に縫いつける。
「な、なに、なんだよ、とも」
文句を言おうとする祥悟の口を、唇で強引に塞いだ。
いつも噛み合わない。
そうじゃないのに。
こちらの気持ちを、祥悟はいつも誤解して決めつける。
まったく逆なのに。
……君を、大切に抱きたいだけなのに。
伝えようとするチャンスを与えてくれない彼に、せめてそれ以上誤解して欲しくなくて、キスで言葉を奪う。
強引なそれが気に入らなかったのか、祥悟はもがいて口づけを解こうとする。もがく彼の手首を鏡に押し付けたまま、逸らそうとする唇に強引に舌を割り入れた。
「んんー…っん、んん」
祥悟は唸りながら抵抗していたが、逃げる舌を絡めとって吸い上げると、急に身体の力を抜いた。
智也がはっとして唇を離すと、怒った目が睨みつけてくる。怯みそうになる心を叱咤して、智也はその目を見つめながら囁いた。
「誤解だよ、祥。君を抱きたいと思ったから、こうしてるんだ。仏頂面なんかしてない。傷つけたくないって緊張していただけだ」
なんとか言いたいことは言えた。
伝わるかどうか、わからないけど。
祥悟のキツい眼差しが、ふわっと和らいだ。
「いやいやなんじゃ、ねーの?」
「まさか。そんなわけないよ」
「尻いじんのとか、汚いからやだろ?」
「嫌なら最初から、こんなことしない。ただね、初めてだから君のソコ、すごくキツくて狭いんだ。君がとても辛そうで、だから興奮が消し飛んでしまった」
「……そっか。なあ?智也」
「なんだい?」
「今日はもうやめとく。明日は一日撮影だしな。尻の穴、自分でゆるめる方法、調べておくからさ、今度休みの日に、もっとゆっくり俺のこと抱いてよ」
「祥……怒ってない?」
祥悟は少しバツが悪そうににやりとして
「怒るわけねーじゃん。おまえだって男相手にすんの初めてだろ?お初同士じゃさ、最初から上手くいくわけねーもん。それよりさ」
祥悟は何故か照れたように目を逸らしながら、指でこちらの股間を撫でて
「今のキス、ちょっとキたかも。おまえさ、少し乱暴で強引な方がいいのな。なんか……すげえドキドキした」
「っ」
……そんな顔で、そんな殺し文句。
祥……。君って、ズルいよ。
ともだちにシェアしよう!