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第241話 秋艶30※

「え……」 祥悟の真剣な眼差しに戸惑う。 「だっておまえのここ、萎えてんじゃん」 言いながら手を伸ばしてきて、こちらの股間に触れてくる。 不意打ちに智也はびくっと腰を引いた。 祥悟は苦笑しながら 「それにずーっと仏頂面してるしさ。ほんとはやなんだろ?男の俺なんか抱くのはさ」 「ち、違う、祥、」 「無理すんなって。おまえってさ、優しすぎて、時々ムカつく」 「祥……」 違う。仏頂面なんかしていない。不安にさせないように、表情をなるべく消していただけだ。たしかにアソコは萎えてしまっているが、それは彼のアナルを傷つけたくないと集中していたからで。 「も、いいよ。ありがと、智也」 祥悟は目を逸らし、こちらの肩を押し退けて、台から降りようとする。 「違う」 智也は咄嗟にその手首を掴むと、後ろの鏡に彼の手を押さえつけた。驚いてあげたもう一方の手も掴んで鏡面に縫いつける。 「な、なに、なんだよ、とも」 文句を言おうとする祥悟の口を、唇で強引に塞いだ。 いつも噛み合わない。 そうじゃないのに。 こちらの気持ちを、祥悟はいつも誤解して決めつける。 まったく逆なのに。 ……君を、大切に抱きたいだけなのに。 伝えようとするチャンスを与えてくれない彼に、せめてそれ以上誤解して欲しくなくて、キスで言葉を奪う。 強引なそれが気に入らなかったのか、祥悟はもがいて口づけを解こうとする。もがく彼の手首を鏡に押し付けたまま、逸らそうとする唇に強引に舌を割り入れた。 「んんー…っん、んん」 祥悟は唸りながら抵抗していたが、逃げる舌を絡めとって吸い上げると、急に身体の力を抜いた。 智也がはっとして唇を離すと、怒った目が睨みつけてくる。怯みそうになる心を叱咤して、智也はその目を見つめながら囁いた。 「誤解だよ、祥。君を抱きたいと思ったから、こうしてるんだ。仏頂面なんかしてない。傷つけたくないって緊張していただけだ」 なんとか言いたいことは言えた。 伝わるかどうか、わからないけど。 祥悟のキツい眼差しが、ふわっと和らいだ。 「いやいやなんじゃ、ねーの?」 「まさか。そんなわけないよ」 「尻いじんのとか、汚いからやだろ?」 「嫌なら最初から、こんなことしない。ただね、初めてだから君のソコ、すごくキツくて狭いんだ。君がとても辛そうで、だから興奮が消し飛んでしまった」 「……そっか。なあ?智也」 「なんだい?」 「今日はもうやめとく。明日は一日撮影だしな。尻の穴、自分でゆるめる方法、調べておくからさ、今度休みの日に、もっとゆっくり俺のこと抱いてよ」 「祥……怒ってない?」 祥悟は少しバツが悪そうににやりとして 「怒るわけねーじゃん。おまえだって男相手にすんの初めてだろ?お初同士じゃさ、最初から上手くいくわけねーもん。それよりさ」 祥悟は何故か照れたように目を逸らしながら、指でこちらの股間を撫でて 「今のキス、ちょっとキたかも。おまえさ、少し乱暴で強引な方がいいのな。なんか……すげえドキドキした」 「っ」 ……そんな顔で、そんな殺し文句。 祥……。君って、ズルいよ。

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