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第245話 秋艶34

「はい。いったん休憩入りまーす」 ピンと張り詰めたスタジオの空気が、その声と共に一気にゆるむ。 智也は隅のパイプ椅子から立ち上がると、まだセットの中に佇む祥悟を見ないようにして、ざわめいているスタジオを後にした。 控え室のドアを開けて中に入ると、後ろ手にドアを閉めてそのまま寄り掛かる。 まだ祥悟との本格的な絡みはなく、単体でイメージカットの撮影だけだったが、朝の余韻を引きずっていたせいで、なんだかどっと疲れた。 あれから、祥悟の濃厚な手淫に翻弄されて一度イき、ついうっかり興奮し過ぎた。ベッドから出ようとする祥悟を押し倒し、キスしながら彼のモノも手でイかせてしまった。 祥悟はそれでスッキリしたのか、さっさとシャワーを浴びに行ってしまった。だが、こちらはなかなか身体の熱が引いていかず、ベッドの上でしばらく悶々としてしまったのだ。 本当に、なんて罪作りな天使だろう。 彼と自分のマンションで過ごす時間は至福だが、拷問でもある。天国と地獄を行ったり来たりで気が休まらない。 「はぁぁぁ……」 つい、昨夜と今朝の祥悟の可愛らしく喘ぐ表情が浮かんできて、智也は大きなため息をついて額に手をあてた。 ……ダメだって。思い出すなよ。 撮影中の祥悟の、打って変わってきりりと美しい表情にも、時折見とれていた。 彼はオンオフどちらも、まったく違う魅力がある。 ……どんだけ好きなんだよ、俺は。 距離が以前より近づいた分だけ、また深みにハマった自覚はある。 寄り掛かっていたドアから身を起こし、奥のソファーに向かおうとした時、ドアがノックされた。 智也は足を止め、振り返って一瞬躊躇した。 祥悟だろうか。今日の控え室は別々だが、こちらに来たのかもしれない。 表情を引き締め、返事をしようとしたら、それを待たずにドアがガチャリと開いた。 「ああ。ここにいたね」 顔を覗かせたのは、祥悟ではなく、城嶋だった。 智也は眉をひそめ、身構えた。 今朝はいなかったのだ。他の仕事の方に行っていると聞いたから、ここへは来ないと思っていた。 「勝手に入らないで下さい」 智也はキツい表情で城嶋を睨みつけた。 「そんな怖い顔をしないでくれ。ちょっと話をしたいと思っただけだよ」 言いながら、図々しく室内に入ってくる。 智也は後ずさりながら 「俺の方には話はありません。出てってくれませんか」 「警戒しないでくれ。もう何もしないよ」 智也はますます顔をしかめた。 昨夜、祥悟にあれだけ言われたくせに、懲りない男だ。何もしないのは当たり前だ。こっちは顔も見たくない。 「とにかく、出て行ってください。俺はあなたに用はない」

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