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第254話 挿話「猫の秘め事」※1

……なんで電話、出ねーのさ。くそっ 祥悟はイライラしながら、また同じ留守番メッセージを流し始めた電話を切って、ベッドの上に放り出した。 まだ濡れている髪の毛をタオルでゴシゴシ擦りながら、放り出した携帯電話で時間を確認する。 付き人から得た情報だと、城嶋はもうとっくに退社している時間の筈だ。 ……またどこぞの男引っ掛けて、お楽しみの真っ最中かよ。 城嶋の情報はあの後も、夜の街の遊び仲間たちからいろいろ仕入れていた。噂の領域を出ないが、どれも胸糞の悪くなるような怪しげな話ばかりだ。 智也も嫌な相手に気に入られたものだ。 ……つかあいつ。ぽやーっとしてるもんな。優しいし、お人好しだしさ。 こちらのバカみたいな過密スケジュールのせいで、せっかく一緒の現場にいられるのに、あいつと穏やかに過ごす余裕もない。 今日の現場も終わった途端にバタバタとスタジオを後にしたせいで、智也の顔を見る暇もなかった。 ……くっそ。イライラする。 オーバーワーク気味でこのところ、消耗が激しい。流石にこのままだと体調を維持するのがキツくなっていた。来週の日程の調整を城嶋に打診しておきたかったのだ。 ……つか、一日ぐらい休ませろよな。 祥悟はベッドにごろんと横になって、天井を見上げた。1日じゃなく3日ぐらい休みを取って、のんびり過ごしたい。 ふと、智也とのやり取りを思い出した。 洗面台で鏡に張り付けられたまま、あらぬ場所を指で掘られていた時のことを。 智也の指は、優しかった。最初はもちろん異物感しかなかったが、あいつの細くて長い指が、決して強引ではなく潜り込んで来た時、苦しさだけでない気持ち良さを感じていた気がする。 智也とのキスは気持ちいい。 胸をいじられるのも、ちょっと不本意だが気持ちいい。 女と快感を追っている時とは、まったく別物の悦びがある。あいつに丁寧すぎるぐらい丁寧に優しく扱われていると、他では得られない歓びと安心感があった。 ……あいつになら……抱かれてみるのもいいかも。 それは本気で思っている。 自分はゲイではない。おそらくバイでもないだろう。性的趣向はストレートだ。 だが、智也には思いっきり甘えてみたい。 たとえそれが、あの優しすぎる男がくれる錯覚だとしても、とことん甘やかされて包まれてみたい。 忘れたくても忘れられない全てのことを、ひとときでいいから頭の中から消し去りたい。 智也との濃厚なキスを思い出していたら、じわじわと身体が熱くなってきた。 身体は疲れ果てて睡眠を欲しているのに、妙に興奮している。 祥悟はそろそろと自分の下腹に手を伸ばした。部屋着のハーフパンツの上から、ソコに触れてみる。 勃起していた。 ……疲れマラかよ。めんどくせーな。 目を閉じて、膨らみをゆるく握る。少し擦っただけで急激に大きさを増した。 祥悟は、はぁ…っと熱い吐息を漏らし、パンツの中に手を突っ込んだ。直に握ると気持ちよくて、思わず腰が揺れる。 「ぁ……は……ぁ……」

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