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第293話 秋艶80
祥悟は顔をあげ、珍しくすごく真剣な表情で真っ直ぐに眼差しを向けてきた。
「俺のことさ、そんなに心配してくれんなら、抱いてよ。他になんも考えらんねーくらい夢中にさせて?」
「…っ」
祥悟はくしゃっと顔を歪めて
「何やってもどう足掻いても、全然忘れられねえの。昔の嫌な思い出も、あいつのこともさ。もうやなんだ。これ以上、振り回されたくない」
「祥……」
祥悟の手が伸びてきて、頬に触れる。じっと見つめられて、目が離せない。
「おまえにだったら、俺、全部信じて任せられる」
「し……祥……」
「優しくなんか、しなくいいからさ。めちゃくちゃにして?俺ん中かき回してぐちゃぐちゃにしてよ。おまえに抱かれてる時だけでもいいから、頭ん中真っ白になりてえの」
智也は両手で祥悟の頬をがしっと挟んだ。耳の後ろに指先を突っ込み、小さなその顔を自分の手の中に閉じ込める。
ーおまえになら、全部信じて任せられるー
これ以上すごい殺し文句が、あるだろうか。
他ならぬ祥悟の口から、自分だけに向けられた言葉なのだ。
「い…いいの?祥。最初はちょっと……痛いかもしれないよ?気持ちいいよりは、苦しいかも」
祥悟はにやっと笑って満足そうに目を細め、顎をくいっとあげた。
「ふふ。それ、望むところだからさ。おまえの好きなように酷くしたっていいし?」
「祥……っ」
智也は彼の顔を引き寄せキスをした。込み上げてくる激情そのままに、噛み付くような口づけだった。
優しくなんか、出来ない。今はそんな余裕はない。身の内から溢れてくる衝動を、止められない。
「んぅ…っん、ん、」
祥悟の唇が開いて、自分を受け入れる。何の抵抗も躊躇もないその動きに煽られて、一気に熱があがる。
ソファーの背もたれに彼の手首を縫いつけ、覆いかぶさってその滴るような甘い蜜を喰らう。
低く唸るような自分の息遣いが、ひどくケダモノじみていた。
本当は優しくしたい。
真綿で包み込むようにそっとそっと大事に慈しみたい。酷くなんかしたくないのだ。痛い思いもさせたくない。
でもそれは、祥悟が、望んでいない。
「んんんっ……はぁ…」
息継ぎも忘れるくらい舌と唇を深く交わらせた後、智也は口づけを唐突に解いた。
お互いに、はあはあと荒い吐息を漏らしながら、急激に昂ってしまった熱を少しだけ落ちつかせる。
自分を射るように見つめる祥悟の眼差しが、既に熱く濡れている。おそらくは見つめ返す自分も、同じ目をしているのだ。
「風呂場に行こう。君の中、柔らかく、してあげる」
祥悟は熱っぽい視線を絡ませながら、こくんと頷いた。
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