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第299話 秋艶86※
祥悟の身体から、ほっとしたように不自然な力みが抜ける。
「ごめんね、ちょっとキツかったよね」
桜色に染まった頬にそっと唇を這わせると、祥悟はぐいぐいと自分から顔を擦りつけてきて
「なに、あれ、なんなのさ。なんか、めちゃくちゃ、変だった」
息を弾ませながら囁く祥悟の口調が、ちょっと舌足らずで甘えている。智也はふふ…っと笑って
「男の子の中にもあるらしいよ、感じるポイントが。感じ方は個人差があるみたいだけど、君はきっとすごく感じるんだね」
「ふーん……。や、でもさ、感じるっつーより、息が出来ねえ感じだった。あ、じゃあ俺とする時、女っていつもあんな風なのかな?」
いや…。ここで君が抱いた女の話なんか出さないで欲しい。
智也はすかさず、その無邪気で残酷な口を、キスで塞いだ。
「んっんぅー…っ」
まだ指は彼の中にある。口づけながら、指をばらばらに動かしてみる。祥悟は腰をくねらせ、鼻から艶っぽい鳴き声をあげた。
……もうそろそろ……大丈夫かな。
まだちょっと狭い気はするが、祥悟の可愛らしい反応に、さっきから自分の息子が堪らなくなっている。
智也はそーっと彼の中から指を引き抜くと、舌をほどいて、離れ際にちゅっとリップ音を鳴らして、小さな鼻の頭にキスをした。
「そろそろ……入ってもいいかい?」
感じきってとろんとした祥悟の目が、ゆっくりとこちらを捉えて瞬きをする。
「ん……。中に、きてよ」
低く掠れた祥悟の誘いに、智也はごくりと唾を飲み込み、彼の顔を両手で包んで愛しさを込めて口づけた。
シャワーで全身をざっと流して、足元が少しふらつく祥悟を支えながら寝室へ向かった。
浴室で一度試しに重なってみようかとも思ったが、やはり初めての夜はシーツの上がいい。
ものすごく特別で、きっと忘れられない夜になるのだ。
まだ水滴があちこちについている祥悟の華奢な身体を、バスタオルで包んで拭いてあげた。髪の毛もタオルで挟んで、軽く叩いて水気をとる。ベッドの端に腰をおろして黙って大人しくしていた祥悟が、不意にうるさそうにタオルを振り払った。
「どうしたの?痛かったかい?」
祥悟は何故かちょっとご機嫌斜めで、上目遣いにちろっとこちらを睨みあげ
「おまえってさ、男抱くの、ほんとに初めてかよ?」
「え……?」
初めてだと認めたくはないが、残念ながら初めてだ。
「正直に言えよ。怒んないからさ」
詰め寄られて、智也は目を丸くした。
「いや、経験値浅くて申し訳ないけど、男相手は本当に初めてだよ。どうしてそんなこと、聞くんだい?」
祥悟は口を尖らせて答えない。
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