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第300話 秋艶87※

「祥、何怒ってるの?俺は何か変なことしたかい?」 突然の不機嫌に智也が戸惑って顔を覗き込むと、祥悟は目を微妙に合わせないように逸らして 「だっておまえ、なんか慣れてる。すげえ余裕ある感じじゃん」 慣れてる?余裕ある感じ? それは心外だ。 いや、というか、そう感じてもらえるように振る舞っているのだから、これは褒め言葉なんだろうか。 「そんなことないよ。さっきからずっと、緊張してドキドキしっぱなしだ。ほら」 祥悟の手を掴んで、自分の胸に手のひらを押し当てさせる。祥悟はこちらをちろっと見て手をあてたまま顔を寄せてきた。 「……ほんとだ。ドキンドキンってしてるし」 耳を胸にぺったりとあてて呟く祥悟の可愛らしさに、愛しさが込み上げてきて泣きたくなる。 智也はタオルを放り出すと、彼の身体を思いっきり抱き締めた。 「続きをしよう」 「ん」 バスタオルごと祥悟の身体を押し倒す。柔らかい長めの癖っ毛が、白いシーツの上にふうわりと広がった。真っ直ぐに自分を見上げる祥悟。 ……今夜だけは、君の全ては、俺のものだ。 ずっと夢見てきた。 このつれない天使を独り占め出来るひとときを。ようやく辿り着けたこの一瞬は、自分の中で大切な宝物になる。 今だけは、祥悟は自分だけの恋人だ。 「祥……」 愛してるよ、と続く言葉は、心の中だけで呟いた。 「智也」 祥悟が両手をあげる。その指を互い違いに絡ませて、シーツにそっと縫いつけた。覆いかぶさって顔を寄せる。見下ろす彼の瞳は、ちょっとだけ不安そうに揺らめいていた。 唇を寄せ、下からすくうようにして、優しく重ね合わせる。 「ん……」 唇を割ると、祥悟が舌をちょこっと出してきた。熱い熱を絡めとって口づけを深くする。 歓喜に心が震えた。下腹がズシッと重たい熱を帯びる。 智也は片手だけ外して、ベッドヘッドの上に用意しておいた専用のローションを掴んだ。片手で回して蓋を開ける。とろみの強い液体を手のひらに取り、そのまま彼の下腹へと手を伸ばす。 「祥。脚を開いて膝を曲げて?」 口づけをほどき囁くと、祥悟はまた少し不安そうに瞳を揺らして無言で頷いた。祥悟の脚が左右に開き、膝を立てる。 その部分を見られたくないと言われたから、この後も手探りだ。 「腰をちょっと持ち上げられる?」 祥悟は頷いて、ぐいっと腰をあげた。脚の間に手を差し込み、窄まりを探り当てる。ローションの滑りを借りて、指を挿入していく。 時間をかけてほぐしたソコは、さっきより少し閉じてしまっていたが、指を揺らしながら慎重に押し入れていくと、拒絶せずに受け入れてくれた。徐々に指を増やして、3本で中をひらいていく。 「んくぅ…っん、んぅ…っん、」 眉を寄せ、小さく呻く祥悟の手を、励ますようにぎゅっと握った。

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