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第305話 秋艶92※
苦しそうだった祥悟の笑みに独特の艶がのる。
智也はその挑発的で蠱惑的な彼の笑顔に、一瞬見惚れてしまった。
あの控え室での出逢いの時、初めて見て忘れられなくなった祥悟の笑顔が、目の前の彼に重なって見える。
「…祥、俺は、」
「もっと俺を、欲しがってよ。ケダモノみたいに抱いてよ」
「…っ」
智也はごくりと唾を飲み込んだ。
これだけあでやかに煽られて、その気にならないなんて男じゃない。ドクドクと脈打つ己の昂りは、この魅惑的な天使の中に既にあるのだ。
表情を引き締めた。
祥悟は自分を望んでくれている。
だったら何を躊躇する必要がある?
「……わかった」
頬を両手で包んで口づける。
最初は優しく。
徐々に深く激しく。
心と身体の昂りを熱を、共鳴させ同化させていく。
キツく舌を絡ませながら、ゆっくりと腰を前後に揺らし始めた。
「…っん、んぅ……ん、ん、」
口を塞がれた祥悟の鼻から、かなり苦しそうな呻き声が漏れる。まだ気持ちよくはないのだろう。でも、もう躊躇はしないと決めた。
彼が欲しがるものを与える為に、自分は離れずに側にいるのだ。
小刻みに腰を揺する。じわじわと。
祥悟の中は痛いくらいに締め付けてくる。それが苦しいのに気持ちいい。こんなに甘く狂おしい痛みがあるのだと、初めて知った。
「祥……祥……祥……」
智也はうわ言のように名を呼びながら、背筋を駆け抜けていく快感に追い立てられるように、腰の動きを徐々に大きくしていった。
救いを求めるように伸ばしてくる手を繋ぎ、シーツに押し付ける。ぐっぐっと回し入れていくと、中がうねりながら自分を飲み込んでいく。根元まで押し入る。肩に担いだ祥悟の内腿がビクビクと引き攣れた。
「あ、ああっ、あああーっっ」
苦し紛れにもがく祥悟の身体がずり上がる。ベッドヘッドに頭をぶつけそうになって、智也は咄嗟に手を差し入れて庇った。
「…っ、祥、…っ」
「と、もや…」
祥悟の応えは声にならない。
ずり上がった彼の身体を元の位置まで戻して、智也はゆっくりと腰を引いていった。さっき侵入するペニスを押し戻そうとするようにうねった中が、今度は離すまいとするように絡みついてくる。
「ぁあ、…っあ、んー…っあぁ…っ、あ、」
祥悟が掠れた鳴き声をあげて首を振る。
ギリギリまで引いて、智也は動きを止めた。
「祥……」
キツく瞑った祥悟の目蓋が、震えながらゆっくりと開く。焦点の合わないその瞳が、揺らめきながらこちらを見上げる。
「…もっと、動いても、いい?」
遠慮がちに問う声に、祥悟は弱々しく微笑んだ。
「……もっと」
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