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第309話 秋艶96※
「ふふ…なんか、すげー、新鮮」
首を振ってキスをほどいた祥悟が、楽しげに鼻を鳴らす。
「えっ……何が?」
祥悟は腰の上でもぞもぞと動いている。しっくりくる体勢を探しているらしい。
「ん…っ、だってさ、男組み敷くのって、っ俺、初めて、だし?」
息を弾ませながら放つ彼の意外な言葉に、智也は目を見開いた。
……え。組み敷く…?……あ、たしかに俺が下か。や、でも、俺が君を抱いてるんだけど…
「おまえの、イった顔も、すげえ、いいな。なんか、グッときちまったし。女の気持ち、ちょっとわかった、かも」
祥悟は眉を寄せながらもひどくご機嫌の様子だ。
じっと見下ろされてそんなことを言われると、どんな顔をしていいのか分からない。
もっとじっくり祥悟の中を味わいたかったのに、ほとんど動かないうちに達してしまった。
祥悟は片手をシーツについて、もう一方の手で、額に汗で張り付いた髪の毛を、細い指先で優しく払い除けてくれた。
「なんか、不思議だ。繋がってるだけでさ、おまえのこと、すげー可愛く思えてくるのな」
「っ」
ちょっと甘さのある低い声で囁かれて、ゾクッとした。楔を打ち込んでいるのは自分の方なのに、祥悟に抱かれているような妙な気分になる。
「祥」
智也は手を伸ばして祥悟の手首を掴み
「このまま、動いてもいいかい?」
主導権を奪われたのがなんだか嫌で、智也はそれを奪還するべく低い声で囁いて、腰を下から軽く揺すってみた。
「ん…っ、んぁ、はぁ…っ」
祥悟のドヤ顔が、ちょっとせつなげに歪む。
智也は焦らすようにゆっくりと、腰を回してみた。
「あ…っは、ぁぁ…っ」
「もっと、腰、あげて?」
ペニスの根元まで咥えこんだ祥悟が、両足を踏ん張ってじわじわと腰を浮かす。
自分のイった瞬間の顔は知らないが、中で感じ始めた彼の表情は、すごく新鮮だった。抜きあいっこしていた時とはまた違う艶を纏って、視覚的にも堪らない気分にさせてくれる。
……本当だ、祥。こうして繋がっているだけで、君への愛しさが溢れて止まらないよ。
決してスムーズでもカッコよくもない、ぎこちない初めての交わりになってしまった。だが、眠れない夜に何度も夢想したどんなイメージよりも、何倍も気持ちよくて、身体だけでなく心も満たされていく。
智也は両手で彼の細い腰を掴むと、下からじっくり突き上げ始めた。潰してしまいそうで怖かったさっきよりも、ちょっと心に余裕が出てきた。
「あ……っぁあ…っぁ、あ、…あっは、ぁあ…っ」
突き上げに合わせて腰をくねらせ、掠れた喘ぎ声をあげて身を捩る祥悟を、下からじっと見つめる。
時折、すごく感じる場所に当たるのだろう。
祥悟の声に、感じ入ったような甘い色が滲む。
彼の身体が自分に与えてくれる刺激以上に、彼が自分の楔で乱れてくれるのが嬉しくて仕方ない。もっと感じさせたい。もっともっと悦びに狂って欲しい。
自分は祥悟の、ただ1人のオトコになれたのだから。
「祥…っ、もうちょっと、腰、あげられる?」
問いかけに、祥悟がぎゅっと瞑っていた目を開く。その瞳はとろんと蕩けていた。
「んっ、」
祥悟が肩に手を置いて、両足をぐっと踏ん張った。そのまま抜けてしまいそうになる前に、腰を両手で押さえ込む。
さっき見つけた祥悟の感じるポイント。
恐らくは前立腺というやつだ。
浅い位置のあの場所を自分のペニスで擦りあげたら、祥悟はもっと気持ちよくなれる。
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