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第312話 秋艶99※
余裕なんかないくせに、それでも隙があれば憎まれ口を叩こうとする祥悟が可愛い。
本当にもう、どうしようもなく愛しい。
「祥……」
愛してる、と、続けたくなる。
想いが溢れてせつなくてもどかしい。
「気持ちよく、なってきた?もう、苦しくない?」
祥悟ははぁはぁと荒い息を吐き出しながら、なんでもないような顔をして首を傾げ
「ん…。さっき、より、苦しくないし?でも、なんかやっぱ、すげえ変。俺ん中、おまえがいるのって」
途切れ途切れにそう言って、そろそろと顔を近づけてくる。撮影の為にいつもより伸ばした髪の毛が、ふぁさっとこちらの頬に触れて擽ったい。
「キス……して?」
じっと目を見つめて智也が甘くねだると、祥悟は楽しそうに声をあげて笑って
「ん。じゃあさ、おまえ、動くなよ。俺が動く」
どうしても、ただの受け身ではいたくないらしい。
智也は思わずふふっと笑って
「いいよ。君の、好きなように、動いて?」
祥悟はふんっと鼻を鳴らすと、覆いかぶさってきて唇を重ねた。
しっとりと押し付けられる柔らかい感触。つい舌を割り入れようとしたら、目を開けて睨まれた。智也は大人しく、彼のリードに任せることにした。
ちょん、ちょんっと啄むバードキス。触れては逃げてまた触れてくる。追いかけたくなる焦れったいキスに、少しずつ熱を煽られていく。触れる度に、少しだけ深くなる。同時に彼の中もきゅ、きゅ、っと収縮して、じわじわとした甘い痺れがそこから広がっていく。
ちゅうっと唇を吸われ、舌でトントンと促されて、智也はそっと唇を開いた。
ぬめる熱が隙間を押し開くように忍び込んでくる。
乾いたキスが途端に一気に湿り気を帯びる。
割り入ってきた彼の舌を、唇を窄めて捕まえる。
祥悟は鼻息だけでふふっと笑って、不意に腰をゆるゆると動かし始めた。
「っ」
咥えたままじわりじわりと、擦られていく。祥悟は慎重にゆっくりと腰を上下させている。その刺激が堪らなくいい。
智也はきゅっと眉を寄せ、沸き起こる快感に呻きそうになりながら、彼の舌を夢中で吸った。
揺れながら、んく…んくっと鼻から漏らす甘苦しい祥悟の鳴き声に、腰の痺れがいっそう強くなる。
動くな、と彼は言ったが、こんな状態でじっとしてるなんて、拷問だ。
思いっきり突き上げて、彼の中で暴れ回りたい衝動を、吐息と共に必死で飲み込む。
いつのまにか絡め取られた舌が、祥悟の口の中で転がされていた。上も下もみっちりとひとつになって、蕩かされていく。
智也は目を瞑って、ただひたすら祥悟がくれる快感の波に身を任せた。
……ああ……祥……すごいよ……溶けてしまいそうだ。
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