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第317話 君という鎖4

「おはよ」 すぐ真上から声が降ってきて、智也は夢の残像から引き離された。 ぱちっと目を開けると、まだ夢の続きなのか、祥悟が自分を見下ろし微笑んでいる。 智也は寝惚けたまま腕を伸ばし、窓から射し込む朝日を受けて眩しいくらいに美しい天使を、ぐいっと引き寄せた。 「うわっ」 不意をつかれた祥悟が、胸に倒れ込んでくる。 重たい。温かい。 これは……夢じゃない。 智也は一気に覚醒して、嬉しい重みを抱き締めた。 「ちょ、くるし、」 胸に顔を埋めた天使が、じたばたと暴れる。 「ごめん」 智也は慌てて腕の力をゆるめた。 「おまえー。寝惚けてんだろ」 顔をあげた祥悟が、睨みつけてくる。 ああ。夢じゃない。 これは俺の大好きな祥悟だ。 「……ごめん。寝惚けてた」 智也がそう言って眉尻をさげると、祥悟はくすくすと胸の上で笑って 「おまえの寝起きってわりと新鮮。いっつも先に起きてるもんな。寝癖、すごいことになってるけど?」 智也が焦って髪に手をやると、祥悟が伸びあがって寝癖の部分を柔らかく撫でてくれた。 「祥……ありがとう。おはよう」 ふふっと笑う彼の髪の毛が、陽光に透けている。 もう見慣れたはずの彼なのに、ドキドキするくらい綺麗だ。 祥悟の顔が降りてくる。唇が触れる寸前まで、智也は目を開けていた。 ちゅっと啄まれて、心が震える。 なんて甘くて優しいキスだろう。 智也が唇を突き出すと、祥悟はまたくすくす笑いながら、今度は唇を深く重ねてきた。 寝起きの乾いた唇が、一気に潤う。 舌をちょこっと出してみると、祥悟はすかさずそれを捕らえて、唇でじゅ…っと吸ってきた。 はぁ……っとお互いに熱い吐息を絡めて、更にキスが深くなる。絡めとった彼の舌を口の中で転がすと、祥悟は微かに鼻から鳴き声を漏らして、両手の指先を髪の毛の中に差し込んでくる。 「ん……ふ……ん、ぅ……」 濃厚な口づけの合間に、耳を擽る祥悟の甘い吐息。 触れた場所から甘い疼きが次々と生まれて、身体がじわりじわりと熱くなる。 智也は、祥悟の襟足の髪の毛を掻き分け、首をグイッと引き寄せた。 これは、いわゆる朝チュンというやつだ。 愛し合い、深く身体を重ね合った後で、迎えた2人だけの目覚めの朝。 こんな至福の時があるなんて、夢みたいだ。

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