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第322話 君という鎖9※

「祥……寝ちゃった…?」 「ん……」 かなり長い間、放心していた気がする。 いや、もしかしたら少し微睡んでいたのか。 汗をかいた身体が冷えて、肌寒さに目が覚めたのだ。目を開けても、しばらく放心状態でぼんやりしていた。やがて、首を回すと、自分の隣でうつ伏せになっている愛しい人の姿が目に入った。 そっと声をかけると、ぐっすり寝入ってたように見えた祥悟が、パチッと目を開けてこちらを見た。 視線がまともに絡み合い、智也はなんだか照れくさくなって微妙に目を逸らした。 「なんかさ……」 「ん?何だい?」 上半身だけ起こして、ベッドの隅に追いやられていた布団を引き寄せ、祥悟の剥き出しの肌にそっと掛け、隣に寝転がった。祥悟はもぞもぞと身体を反転させて、 「や。すごかったな……ってさ。ヤバかった。俺、ちょっと飛んでたかも?」 「……それ、気持ちよかったって…こと?」 智也は気になって、腕で這って祥悟に近づき、顔を覗き込んだ。祥悟はふふっと小さく笑うと 「ん。なんかさ、未知の世界。おまえのってデカすぎって思ってたけど、奥の方に突っ込まれるとさ、俺ん中びくびくして…すっげー変なのな」 「変って?…痛かった?」 「ううん。痛くねーの。途中から苦しいのもなくなってさ、おまえ言う通り、後ろからの方が気持ち、よかったかも」 まだ半分とろんとした目で、若干舌足らずに喋る祥悟が、なんだか可愛くて目が離せない。 祥悟はすこぶるご機嫌だった。それはそれは幸せそうに、さっきの行為をつぶさに反芻している。 ちょっと具体的過ぎて、聞いてるこっちが気恥ずかしくなるくらいだ。 「そう。やっぱり密着感が違うからかな」 祥悟は目をくりくりさせて、こちらの顔を覗き込んできて 「おまえはどうだったのさ?どっちのが気持ちよかったんだよ?」 事後の気怠い甘さ混じりの睦言といった感じではなく、楽しくスポーツした後のような雰囲気だが、祥悟がとびきり幸せそうに笑っているのが嬉しい。智也はふふっと笑って 「俺はどっちも気持ちよかったよ」 「どっちもかよ。ふーん……」 「身体、汗で汚れて気持ち悪くない?タオル、持ってくるよ」 智也がそう言って起き上がろうとすると、祥悟にすかさず腕を取られた。不意打ちにつんのめり、祥悟に覆い被さってしまいそうになって、智也は慌ててシーツに手をつき腕を突っ張らせた。 「こら。危ないよ、急に…」 祥悟は構わず腕をぐいぐい引っ張ってきて、布団の中に引きずり込むと 「いいからぎゅーってしろよ。ほら」 無邪気に笑いながら両手を伸ばしてくる。智也は微笑んで、祥悟の身体を抱き締めた。 少し冷えてしまった皮膚が、互いの体温を与えあって温かくなる。人肌の温もりの心地よさに、智也はほぉ…っとため息をついた。

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