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第323話 君という鎖10
抱き合って身体がぽかぽかしてくると、急に眠気が出てきた。
時計を見ると午前10時。
今日は祥悟も一日フリーだと言っていたし、もう少し微睡んでから起き出してもいいかもしれない。
智也は少し腕の力をゆるめると、腕の中の仔猫を包み込むようにして目を閉じた。幸せの余韻に浸って二度寝するなんて最高の贅沢だ。
そのままうつらうつらし始めてすぐ、胸元に埋めていた祥悟の頭がもぞもぞと動いた気配に、ハッとして目を開けた。
祥悟はさっきよりくっきりとした目で、こちらの顔をじ…っと見ていた。智也は首を傾げ
「どうしたの?あ、ちょっと苦しかったかい?」
祥悟は首をゆっくり横に振ると
「んー。おまえのイメージ、ちょっと変わったかもって思ってさ」
どうやら祥悟はまだ話し足りないらしい。腕の中でポツリと呟く祥悟の言葉の、その先が気にかかる。
「え。変わったって……例えば?」
「んー……おまえってさ、歳のわりに落ち着いてるし、物静かで優しいじゃん?」
「そうかな…?」
自分ではよく分からない。客観的に見た自分のイメージなんて。
「うん。あの業界にいるから余計になんだろけどさ。おまえみたいな欲のないタイプって珍しいんだよね。みんな自己顕示欲つえーし派手だしさ。人押しのけて俺が俺がってやつ多いし」
それならば、なんとなく分かる。自分があの世界では、ちょっとのんびりし過ぎているってことは。
「社長にもいつも言われてるよ。もっと向上心を持て、貪欲になれって」
智也が苦笑すると、祥悟は嫌そうに眉をひそめ
「ちぇっ。あのおっさんの言うことなんて放っておけよ。あいつは人見る目ないんだし」
「ふふ。社長のことそんな風に言えるの、君だけだよね」
「おまえのさ、のほほんとしたとこだって個性だし。そもそも、隠れてる能力、引き出すマネージメント出来ねぇ時点で、あのおっさんは無能なんだよ」
祥悟は吐き捨てるように言いきって、こちらの胸に鼻先を擦り付けてきた。
「それよりさ。おまえって色気あるのな」
「え。色気?」
「うん。普段のおまえからってそういうの感じないんだけどさ。なんつーの?動物的な印象ないっていうか、体臭あんのかよ?って思うくらいそういうの表に出さねえじゃん?」
「そうなの?人間っぽくない?」
「や、そうじゃねえけど、清楚で地味。いい意味でも悪い意味でも。でも俺、こないだ気づいちゃったんだよね」
「何を……?」
ドキッとした。祥悟はまた何を言い出すんだろう。
「撮影の時にな。……ま、いっか。そっちはおいおい手を打ってみるし。それよりさ、さっきえっちしてた時のおまえ、すげえケダモノっぽかった。目とか顔つきとかさ、荒々しい仕草とかさ」
智也は動く祥悟の唇をじっと見ていた。いつもより血色がよくてまるでリップクリームでも塗ったようにツヤツヤしている。舐めてみたら甘そうだ。
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